日本の歯科医師の現状について

院長のコラム

日本の歯科医師の現状について

第1回は日本の歯科医師の現状について触れてみたいと思います。
少し硬い内容になりますが、皆様の口腔内の健康を担う人々に関することなので、しばらくお付き合い下さい。

先日、第103回歯科医師国家試験の合格者発表がありました。
3465名の受験者に対し、2408名の合格者で合格率は69.5%でした。
私が受験した頃に較べると、ずいぶんと低い数字です。これは受験者のレベルが下がっているのではなく、合格者数を抑えているためです。高校卒業後、歯学部の入学試験に落ちたのならまだ方向転換も容易でしょうし、受験に失敗したという傷も浅いでしょうが、6年間という時間と高い学費をかけた後に国家試験に受からず、歯科医師の資格が取れない学生は、一体どうすればよいのでしょう。
(シンガーソングライターの井上陽水さんのような才能があれば、歯学部出身でも歯科医師よりずっと楽しそうな人生が送れるのでしょうが・・。)

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20年ほど前までは、”歯医者=お金持ち”というイメージがありました。
国民1人当たりの歯科医師数が絶対的に足りなかったため、患者数が多く、結果として収入面では潤っていたのだと思います。また、そうでなければ、国民の口腔の健康を担うという仕事に優秀な人材は集まりません。
私の父は千葉県の茂原駅近くで開業している現役の歯科医師ですが、45年前まで今よりもう少し交通の不便な場所で開業しており、1日に数本しかないバスで来院する患者さんは、少しでも早い順番待ちを取ろうと、最寄りのバス停から診療所まで我先にと走ってきたそうです。また、診療時間内に診きれなかった患者さんのため、自宅で早めの夕食を済ませた後、診療室に戻って診療を続けていました。子供心にも、「ウチの夕食はなんでこんなに早いんだろう?」と疑問に思ったものです。

このような顕著な歯科医師不足を解消するため、30年以上前から歯学部の増設が行われました。その結果、十分な数の歯科医師が誕生し、歯科医師数過剰問題が取沙汰されるようになってからも、増設した歯学部をそう簡単に無くすることもできないので、さらに毎年2千人以上の歯科医師が誕生しているのが現状です。政府は遅ればせながら歯科医師数を抑制する努力をしており、先ほどお伝えした歯科医師国家試験の低い合格率もそのひとつなのです。

いまやコンビニエンスストアより多いといわれる歯科医院の数ですが、厚労省の調査によれば、歯科医師の4人に1人は年収200万円以下となっているそうです。このような環境で歯科医師を目指す優秀な学生を集めるのは容易ではなく、受験者が入学定員に満たない歯学部すら出ており、現在、開業されている先生方のなかでも、お子さんを歯科医師にさせない方が少なくありません。そして現在の歯学生がやがて歯科医師となり、彼らが日本国民の歯科口腔の健康を担う立場となってゆくのです。歯科医師過剰問題は、歯科医師だけの問題でなく、いずれは日本国民の歯科治療のレベルに影響を及ぼす問題なのです。

このような歯科界の現状を憂い、状況を打破すべく、現在、2つのタイプの志のある歯科医師が現れています。ひとつは各自の努力により歯科医師としての技術・知識・医療の質を向上させて勝ち残ろうとするもの、もうひとつは、国の制度等を整備し、歯科界自体を抜本的に変革していこうとする歯科医師たちです。

私も一生涯の職業として歯科医師の道を選んだわけですから、このような逆境に負けることなく、自らが伸びていこうとする前者と、後進への道を切り開いていこうとする後者と、その両面から努力していきたいと考えています。

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