そのインプラント、永く使えますか?

院長のコラム

そのインプラント、永く使えますか?
インプラント上部構造(人工歯)のセメント固定のデメリットについて

インプラント治療が普及するにつれ、様々な問題点が取り沙汰されるようになりました。
当院でも、他院で治療されたインプラントの不具合のご相談で来院される方が増加傾向にあります。

直近の例では、2本連結のうちの1本のインプラント部からの出血のご相談でした。
レントゲン像から判断すると、出血しているインプラント1本が骨との結合を失い、つながっているもう
1本のインプラントに支えられ、ようやく抜けずにお口のなかに収まっている状況です。

そのインプラント、永く使えますか?骨と結合しているかどうかの最終的な判断は、上部構造(人工歯の部分)をはずしてみれば容易につくのですが、この患者さんの場合、上部構造が歯科用セメントでインプラント体に固定されており、上部構造のみをはずすことができません。はずす=上部構造を壊すことになるのです。

インプラントの上部構造の固定方法には、基本である「ネジ固定」と、その後普及した「セメント固定」があります。どちらの方法にもメリット・デメリットがあるのですが、当院では、原則としてネジ固定を行っています。

ネジ固定の主なメリットとしては

  • ネジをはずせば容易に上部構造をはずすことができ、メンテナンスが容易である
  • 長期間の使用のうち、上部構造が欠けた場合でも上部構造だけをはずして修理できる
  • 口腔内の状況が変ってもインプラント体を損なわず上部構造のみを新たに作製・改造できる

メンテナンスおよび修理が容易なことにより、結果としてインプラントを永く使用でき、患者さんにとって、より多くのメリットがあると考えています。ちなみに当院では上部構造の修理中、保存してある仮歯を装着できるため、歯が無い状態で過ごす期間はありません。

ネジ固定のデメリットとしては、

  • ネジ穴があるため、審美性が損なわれる場合がある

当院でも前歯部のインプラントの場合のみ、審美性の観点からセメント固定にする場合があります。
患者さんにデメリットをご説明してから行いますが、多少、見た目が劣っても、永く使えることを優先したいと、ネジ固定を希望される方もいらっしゃいます。

患者さんにとっては多くのメリットがあるネジ固定ですが、治療を行う側にとっては良いことばかりではなく、

  • 精密な上部構造が必要なため、歯科医師および歯科技工士に高い精度の技術が要求される
  • 歯科技工料、材料代が高くなる
  • 治療回数が増えるため、一人の患者さんにかかる歯科医師の作業量が増える

といったデメリットが生じます。

言い換えれば、セメント固定を採用すれば、比較的経験が少ない歯科医師でも治療が容易で、更にコストも低くすることができます。よって価格を抑えたインプラント治療ではセメント固定が多く用いられているのが現状です。

もし上部構造が壊れる可能性が絶対に無いのなら、セメント固定は患者さん、歯科医師双方にとって良い方法でしょう。ふと思ったのですが、これは東京電力の原発事故に共通するものがあるかもしれません。何事も起こらなければ原子力発電は非常に良いが、ひとたび事故が起こると取り返しがつかない事態になる。

長期間の使用で起こり得る様々な可能性を考慮しながら、安心して使えるインプラント治療を目指す私にとって、「上部構造のネジ固定」は治療の基本であり、患者さんを守るための約束であると考えています。インプラント専門医としての矜持でしょうか。(笑)

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