歯科医師人生における4人の師 ②

前回に引き続き私のメンターと言える4人の先生のうち、残りのお2人について紹介させて頂きます。私が歯科医院を開業してからお世話になったカリフォルニア在住のTeru Harada(てる はらだ)先生と、眞坂歯科医院の眞坂信夫(まさか のぶお)先生です。

まずHarada先生についてです。
私がまだ開業して間もないころ、カリフォルニア州パロアルトで開業されている同先生によるドーソン咬合(噛み合わせ)理論の講習会の案内が歯科雑誌に掲載されていました。咬合が極めて大切である歯科補綴(しかほてつ)学の講座に在籍していたにもかかわらず、確固たる咬合理論を身につけていないことがずっと気になっていた私は、思い切って数日間休診し、この講習会に参加しました。

日本語と英語が混じる奇妙なレクチャーでしたが、その内容に感銘を受け、その後も5回、先生の講習会に通いました。その後、Harada先生が来日してレクチャーをするようになったため、日本でのコース開催に携わるようになりました。
下の画像は2005年に当院で行われた講習会のものです。

Harada先生からご教示頂いた咬合理論は現在の私の治療の根幹となっています。
この咬合理論の習得無くしては自信を持って治療を行えなかっただろうと思うと、思い切ってパロアルトに行って良かったなとつくづく思います。Harada先生は数年前にリタイアされ、お目にかかる機会もなくなりましたが、私の好きなワインの産地ナパ・バレーにも近い先生のお宅をまた訪ねてみたいと思っています。

最後は破折歯保存治療についてご教示頂いた眞坂信夫(まさか のぶお)先生です。
東京歯科大学の大先輩ですので、以前からお名前は存じあげておりましたが、6年ほど前、大学の同窓会主催の講習会で歯根破折の治療についてお話を伺う機会を得ました。

学生時代、大学では破折した歯の治療方法は抜歯と教えられてきましたので(現在も同じだと思います)歯根破折症例に対しては、私もそれまでは教科書通りに何の迷いも無く抜歯を行って参りました。

歯根が割れた歯を残すことができるなんて、まさか(眞坂)ね・・・」と、最初は半信半疑だったのですが、先生のお話が進むにつれ、治療の理論背景がしっかりしており、長期の経過症例を見せていただいたことにより、頭の中に一筋の光が走ったような衝撃を感じました。

その後、眞坂先生が個人的に講習会を開催していることを知り、すぐに参加いたしました。以来、この治療法を自分の臨床に導入し、多くの患者さんの歯を保存することができました。

私の専門は失われた歯をインプラントブリッジ・義歯などで補うこと=補綴(ほてつ)ですが、歯を失わずに済めば、患者さんにとってはその方が遙かに望ましいことだと思います。
実は、私自身の歯にも信頼できる先生に本法で加療していただき、1本保存することができました。自分自身で受けているのでよく分かるのですが、歯を抜かずに残せたときの喜びは非常に大きいものです。受付で涙を流される患者さんもおられます。

このような治療法を開発され、ご自身の専売特許とするのではなく、後輩の歯科医に教えて下さった眞坂先生には本当に感謝しております。私より17年先輩ですが、非常にお若く、自ら講習会や勉強会を開催され、またWEB会議を取り入れるなど、新しいことにもどんどん挑戦されているお姿には感動させられます。

ここまでに紹介させていただいた4人の先生方、いずれが欠けても、歯科医師としての現在の私はありませんでした。このような先生方に出会う機会を与えて下さった神様に感謝せずにいられません。

4人の先生方から教えて頂いたことは、私もいずれ、後輩達に引き継いでいきたいと考えております。

歯根破折保存治療5年経過報告(成功率について)

歯根が破折した場合、通常の処置は抜歯です。
このような状況にある歯を抜かずに治す治療が歯根破折保存治療です。
当院で本法を開始してから昨年末で5年が経過しましたので、全治療のデータを調べてみました。
2012年11月17日に最初の症例を手がけて以来、口腔外接着再植法の治療経過は以下の通りです。

口腔外接着再植法適用症例数   243症例

そのうち治療が上手く行かなかったケースが27例あり、内訳は以下の通りです。

1.再植不可能        3症例
再植治療中に抜歯となったケースです。原因として、
①非常に歯質が脆く、形を保った状態で抜歯不可
②歯根の先端部分が骨と癒着しており、形を保った状態で抜歯不可
③虫歯の進行がひどく、形を保った状態で抜歯不可

2. 固定除去同日脱落      1症例
再植治療を行い、1か月後に固定を除去しましたが、同日に歯牙が抜け落ちたものです。
原因としては、ご本人が記憶にないほどの長期間、歯根破折の状況が続いていたため、再植時に歯根膜が殆ど残っておらず、歯槽骨に歯根が生着しなかったと考えられます。

3. 治療後に抜歯となった症例数  23症例 
固定除去までは問題ありませんでしたが、その後の経過が思わしくなく、抜歯となったケースです。原因としては
②再破折  7症例(同じ歯の他の箇所が割れてしまったものも含みます)
②動揺  16症例(再植は成功したが、歯の揺れが大きく実用にならなかったもの)

前回の経過報告では成功率は87%と申し上げましたが、現在の成功率は概ね89%ということになります。経験により手技が向上し、オリジナルの治療法に独自の工夫を加えてきたことが、僅かですが成功率の向上に寄与しているかと思われます。

一口に成功と言っても、その状況は様々です。
最も望ましい状況は破折前と同様に歯の動きも小さく、噛んでも全く違和感がなく、審美的(見た目)にも問題が無い場合ですが、多少のグラつきや、硬いものを噛むと違和感が残る場合もあります。もともと、あまり虫歯になっていない歯、破折して日が浅い歯、歯根がしっかりしている場合はかなり良好な結果が得られるようです。

歯根破折が疑われた場合、もしくは歯科医師より歯根破折と指摘を受けた場合、症状が無くても放置せず、出来るだけ早期に受診されることをお勧めします。

歯根破折保存治療5年経過報告(成功率について)

インプラントと歯根破折の勉強会

院長の吉田です。
先日、土曜、日曜と2日続けて2つの勉強会に出席する機会がありました。

土曜日はインプラントに関するもので、私が所属するClub22の例会でした。
ちなみにClub22 のネーミングですが、インプラントは純チタンからできており、その原子番号が22のためそこから命名されたものです。この会は私の師であり、日本におけるインプラント治療の第一人者である小宮山彌太郎先生を顧問と仰ぎ、インプラント治療に真摯に取り組む歯科医師の勉強会です。

そして日曜日は私の破折歯保存治療の師である眞坂信夫先生を中心とするPDM21(Professional Dental Management 21th Century)が開催した破折歯保存治療に関するシンポジウムでした。
この方法を開発した眞坂先生とその指導を受けた弟子たちを中心としたシンポジウムで、ビデオ会議システムを使い、地方の先生方もビデオで参加されておられました。

インプラントと歯根破折保存治療、どちらも私が注力する分野であり、肉体的にはハードな週末でしたが、それぞれ充実した内容で、非常に有意義なものでした。

私の臨床のスタンスは、抜いた方が良いと思われる歯(埋伏している親不知など)以外は残していこうというものです。破折した歯であっても、患者さんが残すことを希望されているならば、可能性がゼロで無い限り、何とか抜歯せずにすむよう務めています。

先日、他院で歯の破折を指摘され、ご本人は保存治療を希望されていらした患者さんのお話です。診察の結果、保存可能であると判断したため、いきなりインプラントではなく、まずは自分の歯を保存することをお勧めし、患者さんも納得されてコンサルテーション室を出て行かれました。
ですが、受付によれば、私がインプラントの指導医・専門医であることから、他院の先生と同じように抜歯してインプラントを勧められるのだろうと覚悟していたのに、まずは抜かずに保存しましょうと提案を受けたことに驚いていらしたとのことでした。

もちろん、既に歯を失くしてインプラント治療を検討されて来院される患者さんや、破折歯保存治療の結果が思わしくない場合の治療の選択肢の一つとして、インプラントによる修復を患者さんには提案することもあります。
ただ、今のところ、破折治療の経過が良いため、まだ当院では破折治療からインプラント治療に移行された方がいらっしゃいません。

昨年、破折治療の成功率について、このコラムで書かせて頂き、それから1年以上経過していますので、アップデートをしなくてはならないのですが、日々の忙しさにかまけて、先送りになっています。年明けにはきちんと数字をまとめ、お知らせしたいと思っています。

吉田デンタルクリニック
院長 吉田 浩一

ダメだと諦めていたのに…

先日、歯根破折保存治療にいらした患者さんのお話です。

無事治療が終わり、「抜かずに済んで良かったですね」と会計をしながらお声をかけたのですが、ちょっと鼻をすすっていらしたので、「お風邪ですか?」と、再度、声をかけようとして顔をあげたら患者さんが涙ぐんでおられ、見ていけなかったかしら?どうしたのかしら?痛かったのかしら?と、どきどきして、私は慌ててまた顔を下げました。

そうしたら患者さんが「有り難うございます。ダメって言われると諦めていたのに・・・」とおっしゃったのです。ご自身では諦めていた歯を抜かずに済んだこと、そしてそれまでのいろいろな思いが溢れだしたのでしょうか、涙もろい私は思わずもらい泣きしそうになりましたが、患者さんと一緒に受付が泣いているわけにはいきませんから、お仕事柄、ぐっとこらえました。

意図的再植治療も含め、歯根破折保存治療は、当院ではほぼ毎日行われますので、私達スタッフにとっては日常的に行われる治療のひとつとなって参りました。
ただ、患者さんはそれをご存知無いので、お一人お一人にとっては、本当にご心配・ご不安を抱えて治療にいらっしゃるんだなと、つくづく思いました。
1か月後に固定を外すまで、治療の成功はわかりませんが、とりあえず、抜歯にならず歯を残せたことは患者さんにとっては本当にほっとすることなのだと思います。

手術が成功したら、あとはこの後の1か月間が非常に重要です。
手術を行うのはもちろん院長先生ですが、この先1か月間は患者さんがいかに治療箇所を大事にしてくださるかにかかっていると思います。

治療終了直後には患者さんも疲れていらっしゃると思いますので、ご自宅でゆっくりお読みいただけるように書面にして注意事項はお渡ししますが、受付でも繰り返し注意事項をお伝えしています。
私自身がこの治療を受けているため、経験者としてお話できることもあるため、少しは参考になるかしら?と思っているのですが、患者さんのなかにはきっと「この受付のオバサン、ちょっとシツコイ・・・」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、「転ばぬ先の杖」ということわざもありますものネ。

今日も午後から破折治療が2症例あります。
患者さんに1か月後に笑顔でお会いできるように、今日も菊地は術後の注意を(あまりしつこくない程度)に説明させて頂く所存であります。

吉田デンタルクリニック
受付 菊地

バゲットサンドは美味しいけれど・・・

本日、1か月前に歯根破折保存治療を受けた患者さんが歯の固定を外すために来院されました。
幸い治療の経過は良く、うまくくっついてくれたようで、本日、仮歯の型採りをし、最終的な被せものを作成するため、しばらく仮歯でお過ごしいただくことになりました。

すぐに最終的な被せ物を作成しても良いのですが、万一、治療した歯の経過が芳しくなかったら、折角作成したかぶせものが無駄になってしまうので、慎重に治療を進めております。

診療が終わって会計時、私がこの治療を受けていることをご存知の患者さんは、
「院長先生から、これからは前歯で硬いものを噛むのはできるだけ避けてくださいと言われたのですが・・・」
と少し残念そうにおっしゃるので、
「そうですね。歯根破折治療に限らず、神経を抜いて治療をした歯は、治療前と見た目は変わらなくても歯は弱くなっているので、前歯で硬いものを噛みちぎるようなことは避けた方が良いと思います。
私は以前、フランスパンをかじって前歯を壊したので・・・」
とお伝えしたところ、
「お食事で出てくるフランスパンはそうしますが、でも、バゲットサンドはかじるしかないですよね・・・」と。なるほど、おっしゃる通りです。

この方はお仕事でよくヨーロッパにお出かけになるのですが、パリに美味しいサンドイッチ屋さんがあるそうで、パリに行くたびに立ち寄っているとのことでした。
バゲットサンドってカスクートというのでしたっけ? たしかにバゲットにハムとチーズを挟んだだけのシンプルなサンドイッチでも、とても美味しいですよね。

う~ん、お気持ちはよくわかるのですが、バゲットサンドをかじって、旅先で前歯が取れてしまっては大変です。
ちょっと柔らかめのクロワッサンサンドあたりでいかがでしょう?と、受付で楽しくお話させて頂いた菊地でありました。

吉田デンタルクリニック
受付 菊地

スウェーデンだったら歯根破折は少ないかも・・・

小雨降る生憎のお天気のなか、昨日、テぺの院内セミナーが開催されました。
スピーカーはクロスフィールド社の歯科衛生士の小林さんで、出席者は当院スタッフのほか、院長先生の母校である東京歯科大学の付属衛歯科生士校の学生さん2名が参加してくださいました。
日本の将来の予防歯科を担ってくれる歯科衛生士の卵ちゃんたちです。初々しくて可愛い・・・

テぺのセミナーはこれまで何回か受けているのですが、小林さんから毎回新しい情報・知識を得ることができ、とても参考になります。小林さんは毎年、お仕事でスウェーデンに行かれる方で、大のスウェーデン通です。
その小林さんから教えて頂くテぺの故郷、スウェーデンの歯科事情は本当に興味深く、小児から予防歯科が徹底されていることには本当に感心させられます。

今回初めて知ったことなのですが、スウェーデンでは「サタデーキャンディ」というシステムがあって、子供達は、基本的に平日は甘いものを摂取せず、土曜日だけご褒美的に甘いキャンデイを食べることが許されるとか。
スウェーデンも移民が増えて、この習慣も全ての国民に徹底されているわけではないそうですが、生粋のスウェーデン人には当たり前のことだそうです。小児の虫歯予防にはとても効果的ですよね。
小林さんのお話を伺っていると、スウェーデンではいかに国民が歯を大切に思っているか、本当に良くわかります。

子供のうちに虫歯予防が徹底されるということは、大人になっても虫歯の数は少なく、よって虫歯で神経を抜くことも少ないそうで、うろ覚えの数字ですが、スウェーデンでは、50代で神経を抜いた歯の本数が平均1.6本くらいだそうです。えっ?そんなに少ないの?

翻って私の歯を考え、レントゲン写真を見たところ、28本のうち、既に7本も神経を抜いています。神経を抜いた歯ということは、栄養がゆきわたらない枯れ木状態の歯なので、歯根破折の可能性があるということです・・・

おりしも昨日の午後、神経ギリギリまで虫歯が進行していて、歯の詰め物の型採りはしたものの、神経まで炎症が及んでいないことを確認してから詰め物をしましょうと、しばらく経過観察をすることになった患者さんがおられました。神経を抜くと歯が弱くなってしまうので、できるだけ神経を残しましょうという考えによるものです。この患者さんは、もともとは歯根破折の治療がきっかけで当院にお越しになり、他の虫歯の治療も当院でさせて頂いているのですが、神経を抜いてしまったら、また歯根破折のリスクを負うことになってしまいます。

当院には「かかりつけ医から歯の根が折れて抜歯しかないと言われたのですが、できるだけ歯を抜きたくないのです」と、歯根破折保存治療についてのお問い合わせが多く寄せられます。
かく申す私も院長先生にこの治療のお世話になった患者の一人でありますが、神経を抜いた歯が少ないスウェーデンだったら、きっと歯根破折のお悩みも少ないんだろうな・・・とため息をついた菊地でありました。

その一方で、歯を失った場合の画期的な治療法であるインプラント療法もまた、スウェーデンの故ブローネマルク教授が開発されたことも興味深いですね。院長先生は何度もこのブローネマルク教授にお会いになっているそうですが、機会を見て、院長先生や小林さんに伺ってみようと思います。

吉田デンタルクリニック
受付 菊地

今日治療してくださいと言われても・・・

お休み明けに歯根破折保存治療のお問い合わせが集中したことは前回のブログでちょっとお伝えしたのですが、その中で「初診で今日治療してください」というようなお電話がありました。

初診時、すぐ治療してほしいというお気持ちは私もこの治療の経験者なので心情的には良くわかるのですが、基本的に、破折保存治療の初診時に治療は行っておりません。

初診時は、まず院長先生が口腔内と画像を確認し、破折保存治療が行えるかどうか?の診断になります。診断の結果は様々で、破折していない方、根管治療を選択される方、残念ながら治療が難しい方もおられます。

治療を受けられることが決った方も、その方の治療内容により所要時間が1時間~2時間かかるため、院長先生から治療時間の指示が受付に伝えられ、後日、改めてきちんとお時間をお取りします。

その後1か月後に固定をはずして治療終了となります。

このような流れとなりますので、初診時は診断のみとなります。
お気持ちは良くわかりますが、申し訳ございません。どうぞご了承くださいませ。

吉田デンタルクリニック
受付 菊地

その抜歯、ちょっと待って!

先日、私にとってちょっと感慨深い患者さんが定期検診にお見えになりました。
この方は数か月前の土曜日の朝10時前に、ご予約無く突然来院された方です。

伺うと、昨日、ご自宅近くの歯医者さんで歯が割れていると診断を受け、早く抜いたほうが良いからと、月曜日に抜歯の予約を取ったそうなのです。ですが、出来れば抜きたくないので、本当に抜かなくてはならないか診てほしいと当院にいらしたのでした。

当院が完全予約制であることはご存知だったと思うのですが、患者さんにとっては地元の歯科医院で既に抜歯の予約を取っているため、当院で診てもらうのには今日しかない!と、やむなく、いきなりいらっしゃったようです。

ご予約枠が空いていれば、もちろん当日でも拝見できるのですが、生憎、その土曜日は終日全く空き時間が無く、翌月曜日に再度お越しいただくようにお願いしました。

患者さんは、「でも月曜日にはもう抜歯の予定なのですが・・・」とおっしゃいます。
診療が始まって院長先生に相談できる状況でなかったため、私自身が破折保存治療を受けており、経過が順調なため、思わず
「その抜歯、ちょっとお待ちいただいたらいかがでしょうか?抜くのは何時でもできますので。」と差し出がましいことを言ってしまいました。

この方は納得され、問診表だけご記入いただき、月曜日にお越し頂くことになりました。
あとから問診表の紹介者の欄を見たら、当院で歯根破折の治療をお受け頂いたご家族の方からのご紹介でした。ご家族も予後が良いため、それが来院動機だと思われます。

結論としてその方は無事、歯根破折保存治療が成功し、最終的な被せ物も当院でなさり、今は定期検診で3か月毎にお越しになっておられます。
お近くからの患者さんではなかったので、せっかくいらした土曜日に拝見できなかったのは申し訳無かったのですが、患者さんのご希望通りにご自身の歯を残せたことは、長い目で見れば良かったのではないかと思っています。
これからも定期検診で長くお付き合いできればと思っております。

吉田デンタルクリニック
受付 菊地

ひょっとして私の歯って抜かなくても済むのかしら・・?

今日は春の暖かさが戻りましたね。
昨日までの凍える寒さで、すっかり凝り固まっていた身体も心もほぐされ、また昨夜、WBCの侍ジャパンが6連勝で準決勝進出も決め、何となくウキウキと気持ち良~くお仕事している今日の菊地であります。

先ほど電話でご予約をお取りした歯根破折保存治療のご相談で初診の患者さんなのですが、かかりつけの歯科医から破折を指摘され、なぜか、大学病院に紹介されたそうです。

その大学病院では、抜歯以外の選択肢もあるような(?)、本当に抜かなければいけないか良くお考えくださいというようなことを言われて、「えっ?ひょっとしたら私の歯って抜歯しなくても済む可能性があるのかしら?」とインターネットで検索し、当院にお電話下さったようです。

通院の時間帯に制約があったため、少し先のご予約になりましたが、土曜日にキャンセルが出たら必ずご連絡しますね、と電話を切ってから、一体、歯根破折を指摘された方のうち、どれくらいの割合の方が抜歯になっているのだろう?と、ふと思いました。

今日お電話頂いた方のように、ネット検索ができる方で、なるべくご自身の歯を残したいと考える方は、この治療を受けて抜かずに済む可能性が高いと思いますが、長年のかかりつけ医に抜歯と言われ、あまり疑問も持たず、そのまますぐに抜歯→インプラントやブリッジ・入歯などの治療に進まれる方の数がおそらくずっと多いのでしょうね。

当院では歯根破折治療の症例がほぼ毎日あり、他の治療の予定だった方が、急遽、この治療の適用になったり、反対に破折治療予定だった方が、治療途中で破折治療の必要がなくて、他の治療になったりと、特別ではなく、日々の診療の一環として行われるようになって参りました。
将来的にこの治療法に普及したら、抜歯の件数がずっと減るかもしれませんね。

吉田デンタルクリニック
受付 菊地

歯の神経を抜く(抜髄)ということ

特に私の専門とする領域であることから、患者さんの歯の不具合を生じた古い修復物を外し、新しいものにやり直す補綴(ほてつ)治療を毎日のように行っています。

事前に患者さんにご説明する治療計画としては、以下のような流れとなります。
① 問題のある古い修復物を除去する
② 歯が見える状況になってから虫歯等を取り除く
③ 健康な歯質を出した状況で新しい被せ物を作製する

ただ実際に処置に入り、ふたを開けてみると(古い修復物をはずしてみると)、被せ物の下の歯はもうボロボロで、虫歯を取り除いていったら歯が無くなってしまうような状況で、結果として歯を残せないことも珍しくありません。

そういう歯は決まって神経を取り除いてある歯です。

歯の神経を専門用語で歯髄(しずい)と言いますが、この歯髄は歯根の先端に開いている穴を通し、顎の骨から神経と血管が入り込んで成り立っているもので、感覚と栄養供給を司っています。

この歯髄を取り除いてある歯は痛みが出ないため、虫歯になっても気がつかず、また、血液が通わないため、歯が脆くなってしまいます。木が立ち枯れているようなものです。枯れ木は、見た目は木の形はしていますが、枝を折ったらポキっと簡単に折れてしまいすよね。神経を抜いた歯とは、歯の形はしていても、枯れ木同様に脆い状態で、硬いものを噛んだりすると、歯根破折を起こす可能性が高くなります。

先日、歯根破折歯保存治療で通われている患者さんが、帰り際に受付で
「神経を抜いた段階で、歯は余生に入るんですね。」
としみじみとおっしゃったそうですが、歯根破折を経験された患者さんの、的を得たお言葉だと思います。
歯根が破折してしまう歯の殆どは失活歯(歯髄の無い歯)ですし、ごく稀に生活歯(歯髄の残っている歯)が破折する場合もあるのですが、失活歯に比べ、総じて治療後の経過も良好です。

最近では神経を残すことの重要性を理解されている患者さんが増えてきて、歯科医師としては非常に喜ばしい事だと思っております。
生活歯が虫歯になってしまった場合、虫歯を削っていったら思ったより深く、歯髄が露出する場合もあるのですが、私は患者さんに状況を説明し、歯髄を保護しながら、なるべく神経を抜かずに保存することをお勧めしています。神経を残して処置を進め、万一、後で具合が悪くなっても、それから神経を取り除けば済むことです。

神経を残す努力をすることにより、結果的に治療回数が増える可能性はあるのですが、長い人生を共に歩む歯です。なるべく「歯が余生に入る時期を先送りする」ことが、QOL(生活の質)を考えた場合、メリットが大きいと思うのですが、如何でしょうか。