ブラキシズムとTCH

こんにちは、歯科衛生士の児嶋です。
4月14日の日曜日、いつも材料や機材でお世話になっているK.O.デンタルのフェアーへ、
先輩歯科衛生士の青山さんと一緒に行って来ました。

会場の東京ビッグサイトのホール内では各メーカーからブース出展があり、様々な機材を試す事ができます。また、各種セミナーも用意され、私達歯科従事者にはとてもワクワクし、勉強になる催し事なんですよ。

当院では歯根破折のご相談をされる方が多いので、日々の診療で感じていましたが、
私の受講したセミナーでも、講師の先生が、近年歯根破折が増えていると仰っていました。

皆様の健康観やデンタルIQが向上し、虫歯や歯周病に患う歯が減少してきました。
その一方、かみしめ・くいしばりが原因の一つとなる、歯根破折や知覚過敏の症状がお口の中のトラブルとして増加しているのです。

この、かみしめ・食いしばりはブラキシズムと呼ばれ、3種類に分類されます。

1.グラウンディング
上下の歯をグリグリと擦り合わせる運動です。
睡眠時に多く、ギリギリと音を立てます。
皆さんが想像する歯ぎしりはこちらが主です。

2.クレンチング
上下の歯を強くかみしめる運動。
日中におきている状態で多くみられ、無意識に発現。
自覚、他覚症状がないため、こちらからお伝えするまで、気付いていない方が多いです。

3.タッピング
上下の歯をカチカチとかみあわせる運動。
こちらも起きている時にも起こります。

また、通常上下の歯は接触せずに、数ミリほど空いているのが正常な状態ですが、常に接触した状態が続き、歯や歯周組織に負担をかける事があります。
これをTCH(Tooth Contacting Habitの頭文字、上下歯列を無意識にくっつけている癖の事)と呼びます。
1日に上下の歯が接触して良い時間は約20分といわれています。
これは食事の時間も含めてです。短いと思いませんか?
今、上下の歯が接触している方、すぐに離して下さいね。

ブラキシズムやTCHは歯の破折や知覚過敏のリスクを高めます。他にも歯周病の進行、虫歯でもないのに詰め物が外れる、顎関節症等様々なトラブルを起こす要因になります。

当院では歯根破折保存治療やかみ合わせの治療、ナイトガードの作製を行なっております。
ご興味がありましたら、お気軽にお声かけ下さい。

歯科衛生士 児嶋

「あ、それは噛まないでください」

最近忙しくてブログをサボっている私ですが、特に歯根破折についてのブログが減っているなぁと感じています。何故かというと、歯根破折の治療が日々行われるようになり、特筆すべきことが減ってきたように思うのですが、今日は久しぶりにブログに書いて、是非、皆さんにお伝えしたい!と思うことがありました。

本日、破折治療を行った歯に被せ物をして、治療が終了した患者さんのお話です。
破折治療が終了する際、院長先生は必ず患者さんに「一度修復した歯なので、もうあまり硬いものは噛まないでください」と注意を促すのですが、患者さんは何が硬いか、よくわからないものなんですね。

以下、患者さんと院長先生の会話です。

患者さん「肉はいいですか?」
院長先生「肉は大丈夫です」(でもお肉によっては硬いのもありますよね・・・と菊地は思いました。)
患者さん「クルミはどうですか?」
院長先生「カラですか?(院長先生は冗談のつもり)
患者さん「そうです」(真顔で)
院長先生 「あ、それは噛まないでください」
患者さん「あ、そうですか・・・」

アシストについていた歯科衛生士の兒嶋さんもその会話にびっくりしたようですが、クルミの殻って、クルミ割りの器具があるほど固いものですよね。(クラシックバレーのクルミ割り人形ってくるみを割るための人形のことですものね。)

そんなに硬いものかじったら、健康な歯だって割れてしまうかもしれません。院長先生によると、奥歯でそんなに硬いものを噛んだら、関節も壊れるとおっしゃっていました。

私達は仕事柄、どれくらい硬いものを噛んだら歯に良くないか、何となくわかっているのですが、患者さんはやっぱりご存知無いのですね。

最近、先生が院長のコラムで書いておられますが、人生100年時代、永久歯は生え変わらないので、今ある歯をずっと使っていかねばならないのです。
皆様、硬いものをかじって歯を酷使すると、歯が割れちゃいますよ、

柔らかいものばかりじゃ食事はつまらないけれど、この歯をずーっと使って行かねばならないんだ、ということをちょこっとアタマの片隅に置いて頂き、歯をいたわっていただけると、私達はとても嬉しいです。♪

吉田デンタルクリニック
受付 菊地

この歯と100年生きていく

リンダ・グラットン 著「ライフ・シフト」という本に記されているように、これからの若い人は人生が100年になっていくようです。

戦国時代の武将、織田信長の言葉に「人間50年」という文言があります。
本来は平均寿命のことを指しているのではありませんが、1600年代の人たちに較べ、2000年代の人は倍も生きていくことになりました。従いまして、臓器を含めた体もこれまでの2倍、使っていくことが要求されます。歯に関しても同じです。

「8020(ハチマルニマル)運動」というものをご存知でしょうか。
満80歳で20本以上の歯を残そうとするのが主目的で、運動が開始された1989年の達成率は15%程度でしたが、近年では50%に達したとされています。
現在、日本には100歳以上の方がおよそ7万人いらっしゃるようです。この方々に何本の歯が残っているかは不明ですが、「10020(ヒャクマルニマル)」の達成率はかなり低いものと思われます。歯には定年制度というものがないので、これまで以上に長く働くことが要求される歯も大変なことです。

では100歳まで長く歯を残していくにはどうしたらよいのでしょうか。

月並みなお答えになりますが、毎日の正しいセルフケアと、定期的なプロフェッショナルケアが大切です。定期的に歯科医院に通うことにより、歯周病や虫歯になってしまった場合でも、早期発見が可能ですし、ご自身の歯に対する意識の高まりが期待されます。

歯を失う理由としては ①歯周病、②虫歯、③歯根破折の順となっています。
当院では虫歯のチェックには目視に加えレーザーを使用しており、客観的な数値で患者さんに虫歯の状況をお伝えするのですが、「まだ痛くないから・・・」と、治療されない患者さんもいらっしゃいます。
ただ、痛みが出たら神経まで感染が及んでいる可能性が高く、神経を取る治療が必要になります。神経を取ることにより歯根破折を起こしやすくなり、歯の喪失への大きな前進です。

また、虫歯は一旦治療すれば、もう虫歯にならないとお考えの方もおられるのですが、それは大きな誤解です。修復物と歯の隙間から虫歯菌が侵入し、二次虫歯になる可能性は充分にあります。この二次虫歯になる時期をいかに先延ばしにするか?が、歯を長く残すためには、とても重要なのです。

二次虫歯を防ぐためには、詰め物・被せ物の精密な型採りを行い、丁寧な修復治療をしてもらうことに尽きますが、当然、時間と費用がかかります。しかしここで投資しておかないと、その先の治療には更に多くの時間と費用が要求され、それが受け容れられない場合には歯の喪失に向かってまっしぐらでで、とても100年は使えません。

如何にきちんとした治療を受け、再治療を先延ばししていくか?が長く使えるかどうかのポイントになります。

私はこの点をコンサルテーション時に患者さんに力説しているのですが、「前歯は綺麗なのがいいので白いセラミックにするが♪、奥歯は見えないから(精度の低い)銀歯で大丈夫♪」という方が多いのが現実です。これでは「奥歯は早く失っても構わない。」と仰っているのと同義です。
私の説明が不十分なのかもしれませんが、一度抜けたら二度と生えてこないご自分の歯を、どれだけ長く使う必要があるのか?という自覚が、残念ながらあまり認識されていないことを痛感します。

歯が無くなってしまえば、入れ歯やインプラントで修復可能ですが、入れ歯はその使い勝手からQOL(生活の質)が下がることが懸念されます。またインプラント治療は外科手術を伴いますので、誰でも簡単に受けられる治療ではありません。
また、受けられたとしても、高額な費用とエネルギーが要求されます。(抜歯を宣告されたが、抜歯したくないとお考えの方は、歯根破折保存ページを参考になさってください。)

皆さん、頑張ってご自分の歯を100年使いましょう。しかし、かく申す私も昨年、1本の歯を失ってしまいました。残った27本をあと40年使っていかなければ!です。

「根管治療と歯根破折保存治療は違うのですか?」

「根管治療と歯根破折保存治療は違うのですか?」
先日、当院の患者さんから頂いた質問です。

「根管治療」(こんかんちりょう)は「歯内療法」(しないりょうほう)とも言いますが、歯の内部の神経が通っている根管というスペースを綺麗にしていく治療です。

このスペースに細菌感染が起こると歯の根の先端部分に病巣(骨が溶け膿が溜まった状態)が生じます。やがて膿は骨の中を進み、歯肉にニキビのような膿の出口が発現する場合もあります。通常、歯科医院で行われている、いわゆる根の治療がこの根管治療で、ほとんどの歯科医師が行っています。もちろんこの治療を専門に行う専門医もいます。

ただ、歯根が割れて分離したり、ヒビが入ってしまうと、この根管治療で治すことは不可能であり、治療の選択肢としては抜歯となります。

しかしながら現在では、出来るだけご自身の歯を残したい患者さんの希望に沿うよう、歯を抜かずに治す治療法が開発されてきました。これが歯根破折保存治療、あるいは歯根破折歯の治療と呼ばれているものです。この治療法を取り入れている医院は現在のところ限られておりますが、当院では6年ほど前から行っております。

この治療法には大きく分けて2種類があります。
ひとつは根管内部を拡大鏡あるいは顕微鏡で見て、ヒビの入っている部分を修復したり、あるいは歯肉を開いて骨面を露出させ、そこから歯根面のヒビを修復していく口腔内接着法です。
もうひとつの方法は歯を一度抜き、口腔外で修復し、すぐに元に戻す再植法です。どちらを行うかは口腔内の状況と術者の考え方によると思います。
当院では後者を選択する場合が多くなっています。その理由はいくつかありますが、まず、口腔外で処置を行うため、破折箇所を観察しながら、汚染部や虫歯に侵されている部分を十分に取り除くことが可能です。また、乾燥状態で処置できるため、接着が良好です。さらに、一旦、抜歯しますので、抜歯窩(歯根があった部分に相当する骨の陥没部分)に残っている悪い組織を徹底的に除去することができます。
特に破折の程度がヒビではなく、完全に分離している場合には再植法でないと対応できません。再度、歯が生着しない可能性もありますが、これまでのところほとんどありません。
ただ、一度生着したものの、その後の経過が思わしくない場合もあり、当院での成功率は概ね90%です。

最初の質問に戻りますが、歯根が破折しておらず、単に根管が感染している場合に行う治療が根管治療、歯根が破折して感染している場合に行う治療が歯根破折保存治療ということになります。

「インプラント専門医なのに歯根破折保存治療をするのですか?」

「先生はインプラント専門医なのに、どうしてすぐに抜歯してインプラント治療を勧めずに、歯根破折保存治療をなさるのですか?」
当院のホームページをご覧頂き、歯根破折保存治療を希望されてお見えになった患者さんから時々頂くご質問です。
「かかりつけの歯科医師から、歯が割れているからこれはもう抜歯してインプラントしかない!と言われて・・・」と、皆さん異口同音に、驚くほど同じことをおっしゃいます。

患者さんのなかには、出来れば残したいけれど、やはり抜歯しか方法がないなら、インプラントしかないかしら?と、(半分、歯を残すことを諦めて)、インプラント治療で検索されて、当院にお越しになる方もおられます。
確かに私はインプラント専門医ではありますが、残せる可能性がある場合、まず歯を残す治療からお勧めしています。ですので、てっきりインプラントを勧められると思ったのに、「歯を残しましょう」と私に言われて、患者さんは拍子抜けのような感じになるのかもしれません。

患者さんが疑問を持たれるのは、「インプラント専門医」という名称が一般的には、わかりにくいのかもしれません。
「インプラント専門医」というのはインプラント治療に関する十分な技術と知識を有しているという日本口腔インプラント学会から頂くお墨付きであって、ひとつの資格に過ぎず、インプラント治療だけを専門に行う医師であるという意味ではありません。
たとえて言えば、「外科医なのに、なぜ、手術ではなく、投薬で治療するの?」というようなご質問なのだと思います。外科医であっても、身体にダメージが大きい外科処置を行う前に、投薬で治療できる可能性があるなら、まずは身体に優しい投薬による治療を判断するのではないでしょうか。

私がインプラント治療の前に第一の選択肢として歯の保存をお勧めする理由、それは至ってシンプルで、私が「天然歯(ご自身の歯)に勝るものはない」と思っているからです。
確かにインプラント治療は失った歯を補うためには素晴らしい治療法で、専門医になって良かったと思っています。インプラントを応用することで患者さんの噛む機能が大きく改善されたり、隣り合った歯を削らずに済む場合も多くあります。

しかし私はインプラント専門医である前に、失われた歯を修復する補綴専門医であり、さらにそれ以前に歯を守ることを専門とする歯科医師です。口腔機能の保全に努めるプロフェッショナルとして、従前の観念では抜歯しか方法が無かった歯根破折ですが、歯を残せる可能性があるのなら、まずは歯根破折保存治療という選択肢があることを患者さんには説明させて頂いております。もちろん、以前のコラムで書いた通り、説明の結果、インプラントを選択される患者さんもいらっしゃいますが、最終的な決断は患者さんご本人にお任せしています。

インプラント治療に比較すれば、歯根破折保存植法はまだ歴史が浅く、当院でもまだ5年超の経過観察記録しかございません。ただ、この治療を受けられた患者さんには、出来るだけ長く、その歯を使って頂きたい、これが私の目指すものであり、歯科衛生士によるメンテナンスも含め、当クリニックのスタッフ全員がこの目標に向かって日々、努力してくれています。

インプラントは最後の手段と考えいただいて宜しいのではないでしょうか。

歯科医師人生における4人の師 ②

前回に引き続き私のメンターと言える4人の先生のうち、残りのお2人について紹介させて頂きます。私が歯科医院を開業してからお世話になったカリフォルニア在住のTeru Harada(てる はらだ)先生と、眞坂歯科医院の眞坂信夫(まさか のぶお)先生です。

まずHarada先生についてです。
私がまだ開業して間もないころ、カリフォルニア州パロアルトで開業されている同先生によるドーソン咬合(噛み合わせ)理論の講習会の案内が歯科雑誌に掲載されていました。咬合が極めて大切である歯科補綴(しかほてつ)学の講座に在籍していたにもかかわらず、確固たる咬合理論を身につけていないことがずっと気になっていた私は、思い切って数日間休診し、この講習会に参加しました。

日本語と英語が混じる奇妙なレクチャーでしたが、その内容に感銘を受け、その後も5回、先生の講習会に通いました。その後、Harada先生が来日してレクチャーをするようになったため、日本でのコース開催に携わるようになりました。
下の画像は2005年に当院で行われた講習会のものです。

Harada先生からご教示頂いた咬合理論は現在の私の治療の根幹となっています。
この咬合理論の習得無くしては自信を持って治療を行えなかっただろうと思うと、思い切ってパロアルトに行って良かったなとつくづく思います。Harada先生は数年前にリタイアされ、お目にかかる機会もなくなりましたが、私の好きなワインの産地ナパ・バレーにも近い先生のお宅をまた訪ねてみたいと思っています。

最後は破折歯保存治療についてご教示頂いた眞坂信夫(まさか のぶお)先生です。
東京歯科大学の大先輩ですので、以前からお名前は存じあげておりましたが、6年ほど前、大学の同窓会主催の講習会で歯根破折の治療についてお話を伺う機会を得ました。

学生時代、大学では破折した歯の治療方法は抜歯と教えられてきましたので(現在も同じだと思います)歯根破折症例に対しては、私もそれまでは教科書通りに何の迷いも無く抜歯を行って参りました。

歯根が割れた歯を残すことができるなんて、まさか(眞坂)ね・・・」と、最初は半信半疑だったのですが、先生のお話が進むにつれ、治療の理論背景がしっかりしており、長期の経過症例を見せていただいたことにより、頭の中に一筋の光が走ったような衝撃を感じました。

その後、眞坂先生が個人的に講習会を開催していることを知り、すぐに参加いたしました。以来、この治療法を自分の臨床に導入し、多くの患者さんの歯を保存することができました。

私の専門は失われた歯をインプラントブリッジ・義歯などで補うこと=補綴(ほてつ)ですが、歯を失わずに済めば、患者さんにとってはその方が遙かに望ましいことだと思います。
実は、私自身の歯にも信頼できる先生に本法で加療していただき、1本保存することができました。自分自身で受けているのでよく分かるのですが、歯を抜かずに残せたときの喜びは非常に大きいものです。受付で涙を流される患者さんもおられます。

このような治療法を開発され、ご自身の専売特許とするのではなく、後輩の歯科医に教えて下さった眞坂先生には本当に感謝しております。私より17年先輩ですが、非常にお若く、自ら講習会や勉強会を開催され、またWEB会議を取り入れるなど、新しいことにもどんどん挑戦されているお姿には感動させられます。

ここまでに紹介させていただいた4人の先生方、いずれが欠けても、歯科医師としての現在の私はありませんでした。このような先生方に出会う機会を与えて下さった神様に感謝せずにいられません。

4人の先生方から教えて頂いたことは、私もいずれ、後輩達に引き継いでいきたいと考えております。

歯根破折保存治療5年経過報告(成功率について)

歯根が破折した場合、通常の処置は抜歯です。
このような状況にある歯を抜かずに治す治療が歯根破折保存治療です。
当院で本法を開始してから昨年末で5年が経過しましたので、全治療のデータを調べてみました。
2012年11月17日に最初の症例を手がけて以来、口腔外接着再植法の治療経過は以下の通りです。

口腔外接着再植法適用症例数   243症例

そのうち治療が上手く行かなかったケースが27例あり、内訳は以下の通りです。

1.再植不可能        3症例
再植治療中に抜歯となったケースです。原因として、
①非常に歯質が脆く、形を保った状態で抜歯不可
②歯根の先端部分が骨と癒着しており、形を保った状態で抜歯不可
③虫歯の進行がひどく、形を保った状態で抜歯不可

2. 固定除去同日脱落      1症例
再植治療を行い、1か月後に固定を除去しましたが、同日に歯牙が抜け落ちたものです。
原因としては、ご本人が記憶にないほどの長期間、歯根破折の状況が続いていたため、再植時に歯根膜が殆ど残っておらず、歯槽骨に歯根が生着しなかったと考えられます。

3. 治療後に抜歯となった症例数  23症例 
固定除去までは問題ありませんでしたが、その後の経過が思わしくなく、抜歯となったケースです。原因としては
②再破折  7症例(同じ歯の他の箇所が割れてしまったものも含みます)
②動揺  16症例(再植は成功したが、歯の揺れが大きく実用にならなかったもの)

前回の経過報告では成功率は87%と申し上げましたが、現在の成功率は概ね89%ということになります。経験により手技が向上し、オリジナルの治療法に独自の工夫を加えてきたことが、僅かですが成功率の向上に寄与しているかと思われます。

一口に成功と言っても、その状況は様々です。
最も望ましい状況は破折前と同様に歯の動きも小さく、噛んでも全く違和感がなく、審美的(見た目)にも問題が無い場合ですが、多少のグラつきや、硬いものを噛むと違和感が残る場合もあります。もともと、あまり虫歯になっていない歯、破折して日が浅い歯、歯根がしっかりしている場合はかなり良好な結果が得られるようです。

歯根破折が疑われた場合、もしくは歯科医師より歯根破折と指摘を受けた場合、症状が無くても放置せず、出来るだけ早期に受診されることをお勧めします。

歯根破折保存治療5年経過報告(成功率について)

インプラントと歯根破折の勉強会

院長の吉田です。
先日、土曜、日曜と2日続けて2つの勉強会に出席する機会がありました。

土曜日はインプラントに関するもので、私が所属するClub22の例会でした。
ちなみにClub22 のネーミングですが、インプラントは純チタンからできており、その原子番号が22のためそこから命名されたものです。この会は私の師であり、日本におけるインプラント治療の第一人者である小宮山彌太郎先生を顧問と仰ぎ、インプラント治療に真摯に取り組む歯科医師の勉強会です。

そして日曜日は私の破折歯保存治療の師である眞坂信夫先生を中心とするPDM21(Professional Dental Management 21th Century)が開催した破折歯保存治療に関するシンポジウムでした。
この方法を開発した眞坂先生とその指導を受けた弟子たちを中心としたシンポジウムで、ビデオ会議システムを使い、地方の先生方もビデオで参加されておられました。

インプラントと歯根破折保存治療、どちらも私が注力する分野であり、肉体的にはハードな週末でしたが、それぞれ充実した内容で、非常に有意義なものでした。

私の臨床のスタンスは、抜いた方が良いと思われる歯(埋伏している親不知など)以外は残していこうというものです。破折した歯であっても、患者さんが残すことを希望されているならば、可能性がゼロで無い限り、何とか抜歯せずにすむよう務めています。

先日、他院で歯の破折を指摘され、ご本人は保存治療を希望されていらした患者さんのお話です。診察の結果、保存可能であると判断したため、いきなりインプラントではなく、まずは自分の歯を保存することをお勧めし、患者さんも納得されてコンサルテーション室を出て行かれました。
ですが、受付によれば、私がインプラントの指導医・専門医であることから、他院の先生と同じように抜歯してインプラントを勧められるのだろうと覚悟していたのに、まずは抜かずに保存しましょうと提案を受けたことに驚いていらしたとのことでした。

もちろん、既に歯を失くしてインプラント治療を検討されて来院される患者さんや、破折歯保存治療の結果が思わしくない場合の治療の選択肢の一つとして、インプラントによる修復を患者さんには提案することもあります。
ただ、今のところ、破折治療の経過が良いため、まだ当院では破折治療からインプラント治療に移行された方がいらっしゃいません。

昨年、破折治療の成功率について、このコラムで書かせて頂き、それから1年以上経過していますので、アップデートをしなくてはならないのですが、日々の忙しさにかまけて、先送りになっています。年明けにはきちんと数字をまとめ、お知らせしたいと思っています。

吉田デンタルクリニック
院長 吉田 浩一

ダメだと諦めていたのに…

先日、歯根破折保存治療にいらした患者さんのお話です。

無事治療が終わり、「抜かずに済んで良かったですね」と会計をしながらお声をかけたのですが、ちょっと鼻をすすっていらしたので、「お風邪ですか?」と、再度、声をかけようとして顔をあげたら患者さんが涙ぐんでおられ、見ていけなかったかしら?どうしたのかしら?痛かったのかしら?と、どきどきして、私は慌ててまた顔を下げました。

そうしたら患者さんが「有り難うございます。ダメって言われると諦めていたのに・・・」とおっしゃったのです。ご自身では諦めていた歯を抜かずに済んだこと、そしてそれまでのいろいろな思いが溢れだしたのでしょうか、涙もろい私は思わずもらい泣きしそうになりましたが、患者さんと一緒に受付が泣いているわけにはいきませんから、お仕事柄、ぐっとこらえました。

意図的再植治療も含め、歯根破折保存治療は、当院ではほぼ毎日行われますので、私達スタッフにとっては日常的に行われる治療のひとつとなって参りました。
ただ、患者さんはそれをご存知無いので、お一人お一人にとっては、本当にご心配・ご不安を抱えて治療にいらっしゃるんだなと、つくづく思いました。
1か月後に固定を外すまで、治療の成功はわかりませんが、とりあえず、抜歯にならず歯を残せたことは患者さんにとっては本当にほっとすることなのだと思います。

手術が成功したら、あとはこの後の1か月間が非常に重要です。
手術を行うのはもちろん院長先生ですが、この先1か月間は患者さんがいかに治療箇所を大事にしてくださるかにかかっていると思います。

治療終了直後には患者さんも疲れていらっしゃると思いますので、ご自宅でゆっくりお読みいただけるように書面にして注意事項はお渡ししますが、受付でも繰り返し注意事項をお伝えしています。
私自身がこの治療を受けているため、経験者としてお話できることもあるため、少しは参考になるかしら?と思っているのですが、患者さんのなかにはきっと「この受付のオバサン、ちょっとシツコイ・・・」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。ですが、「転ばぬ先の杖」ということわざもありますものネ。

今日も午後から破折治療が2症例あります。
患者さんに1か月後に笑顔でお会いできるように、今日も菊地は術後の注意を(あまりしつこくない程度)に説明させて頂く所存であります。

吉田デンタルクリニック
受付 菊地

バゲットサンドは美味しいけれど・・・

本日、1か月前に歯根破折保存治療を受けた患者さんが歯の固定を外すために来院されました。
幸い治療の経過は良く、うまくくっついてくれたようで、本日、仮歯の型採りをし、最終的な被せものを作成するため、しばらく仮歯でお過ごしいただくことになりました。

すぐに最終的な被せ物を作成しても良いのですが、万一、治療した歯の経過が芳しくなかったら、折角作成したかぶせものが無駄になってしまうので、慎重に治療を進めております。

診療が終わって会計時、私がこの治療を受けていることをご存知の患者さんは、
「院長先生から、これからは前歯で硬いものを噛むのはできるだけ避けてくださいと言われたのですが・・・」
と少し残念そうにおっしゃるので、
「そうですね。歯根破折治療に限らず、神経を抜いて治療をした歯は、治療前と見た目は変わらなくても歯は弱くなっているので、前歯で硬いものを噛みちぎるようなことは避けた方が良いと思います。
私は以前、フランスパンをかじって前歯を壊したので・・・」
とお伝えしたところ、
「お食事で出てくるフランスパンはそうしますが、でも、バゲットサンドはかじるしかないですよね・・・」と。なるほど、おっしゃる通りです。

この方はお仕事でよくヨーロッパにお出かけになるのですが、パリに美味しいサンドイッチ屋さんがあるそうで、パリに行くたびに立ち寄っているとのことでした。
バゲットサンドってカスクートというのでしたっけ? たしかにバゲットにハムとチーズを挟んだだけのシンプルなサンドイッチでも、とても美味しいですよね。

う~ん、お気持ちはよくわかるのですが、バゲットサンドをかじって、旅先で前歯が取れてしまっては大変です。
ちょっと柔らかめのクロワッサンサンドあたりでいかがでしょう?と、受付で楽しくお話させて頂いた菊地でありました。

吉田デンタルクリニック
受付 菊地