今日治療してくださいと言われても・・・

お休み明けに歯根破折保存治療のお問い合わせが集中したことは前回のブログでちょっとお伝えしたのですが、その中で「初診で今日治療してください」というようなお電話がありました。

初診時、すぐ治療してほしいというお気持ちは私もこの治療の経験者なので心情的には良くわかるのですが、基本的に、破折保存治療の初診時に治療は行っておりません。

初診時は、まず院長先生が口腔内と画像を確認し、破折保存治療が行えるかどうか?の診断になります。診断の結果は様々で、破折していない方、根管治療を選択される方、残念ながら治療が難しい方もおられます。

治療を受けられることが決った方も、その方の治療内容により所要時間が1時間~2時間かかるため、院長先生から治療時間の指示が受付に伝えられ、後日、改めてきちんとお時間をお取りします。

その後1か月後に固定をはずして治療終了となります。

このような流れとなりますので、初診時は診断のみとなります。
お気持ちは良くわかりますが、申し訳ございません。どうぞご了承くださいませ。

吉田デンタルクリニック
受付 菊地

その抜歯、ちょっと待って!

先日、私にとってちょっと感慨深い患者さんが定期検診にお見えになりました。
この方は数か月前の土曜日の朝10時前に、ご予約無く突然来院された方です。

伺うと、昨日、ご自宅近くの歯医者さんで歯が割れていると診断を受け、早く抜いたほうが良いからと、月曜日に抜歯の予約を取ったそうなのです。ですが、出来れば抜きたくないので、本当に抜かなくてはならないか診てほしいと当院にいらしたのでした。

当院が完全予約制であることはご存知だったと思うのですが、患者さんにとっては地元の歯科医院で既に抜歯の予約を取っているため、当院で診てもらうのには今日しかない!と、やむなく、いきなりいらっしゃったようです。

ご予約枠が空いていれば、もちろん当日でも拝見できるのですが、生憎、その土曜日は終日全く空き時間が無く、翌月曜日に再度お越しいただくようにお願いしました。

患者さんは、「でも月曜日にはもう抜歯の予定なのですが・・・」とおっしゃいます。
診療が始まって院長先生に相談できる状況でなかったため、私自身が破折保存治療を受けており、経過が順調なため、思わず
「その抜歯、ちょっとお待ちいただいたらいかがでしょうか?抜くのは何時でもできますので。」と差し出がましいことを言ってしまいました。

この方は納得され、問診表だけご記入いただき、月曜日にお越し頂くことになりました。
あとから問診表の紹介者の欄を見たら、当院で歯根破折の治療をお受け頂いたご家族の方からのご紹介でした。ご家族も予後が良いため、それが来院動機だと思われます。

結論としてその方は無事、歯根破折保存治療が成功し、最終的な被せ物も当院でなさり、今は定期検診で3か月毎にお越しになっておられます。
お近くからの患者さんではなかったので、せっかくいらした土曜日に拝見できなかったのは申し訳無かったのですが、患者さんのご希望通りにご自身の歯を残せたことは、長い目で見れば良かったのではないかと思っています。
これからも定期検診で長くお付き合いできればと思っております。

吉田デンタルクリニック
受付 菊地

ひょっとして私の歯って抜かなくても済むのかしら・・?

今日は春の暖かさが戻りましたね。
昨日までの凍える寒さで、すっかり凝り固まっていた身体も心もほぐされ、また昨夜、WBCの侍ジャパンが6連勝で準決勝進出も決め、何となくウキウキと気持ち良~くお仕事している今日の菊地であります。

先ほど電話でご予約をお取りした歯根破折保存治療のご相談で初診の患者さんなのですが、かかりつけの歯科医から破折を指摘され、なぜか、大学病院に紹介されたそうです。

その大学病院では、抜歯以外の選択肢もあるような(?)、本当に抜かなければいけないか良くお考えくださいというようなことを言われて、「えっ?ひょっとしたら私の歯って抜歯しなくても済む可能性があるのかしら?」とインターネットで検索し、当院にお電話下さったようです。

通院の時間帯に制約があったため、少し先のご予約になりましたが、土曜日にキャンセルが出たら必ずご連絡しますね、と電話を切ってから、一体、歯根破折を指摘された方のうち、どれくらいの割合の方が抜歯になっているのだろう?と、ふと思いました。

今日お電話頂いた方のように、ネット検索ができる方で、なるべくご自身の歯を残したいと考える方は、この治療を受けて抜かずに済む可能性が高いと思いますが、長年のかかりつけ医に抜歯と言われ、あまり疑問も持たず、そのまますぐに抜歯→インプラントやブリッジ・入歯などの治療に進まれる方の数がおそらくずっと多いのでしょうね。

当院では歯根破折治療の症例がほぼ毎日あり、他の治療の予定だった方が、急遽、この治療の適用になったり、反対に破折治療予定だった方が、治療途中で破折治療の必要がなくて、他の治療になったりと、特別ではなく、日々の診療の一環として行われるようになって参りました。
将来的にこの治療法に普及したら、抜歯の件数がずっと減るかもしれませんね。

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歯の神経を抜く(抜髄)ということ

特に私の専門とする領域であることから、患者さんの歯の不具合を生じた古い修復物を外し、新しいものにやり直す補綴(ほてつ)治療を毎日のように行っています。

事前に患者さんにご説明する治療計画としては、以下のような流れとなります。
① 問題のある古い修復物を除去する
② 歯が見える状況になってから虫歯等を取り除く
③ 健康な歯質を出した状況で新しい被せ物を作製する

ただ実際に処置に入り、ふたを開けてみると(古い修復物をはずしてみると)、被せ物の下の歯はもうボロボロで、虫歯を取り除いていったら歯が無くなってしまうような状況で、結果として歯を残せないことも珍しくありません。

そういう歯は決まって神経を取り除いてある歯です。

歯の神経を専門用語で歯髄(しずい)と言いますが、この歯髄は歯根の先端に開いている穴を通し、顎の骨から神経と血管が入り込んで成り立っているもので、感覚と栄養供給を司っています。

この歯髄を取り除いてある歯は痛みが出ないため、虫歯になっても気がつかず、また、血液が通わないため、歯が脆くなってしまいます。木が立ち枯れているようなものです。枯れ木は、見た目は木の形はしていますが、枝を折ったらポキっと簡単に折れてしまいすよね。神経を抜いた歯とは、歯の形はしていても、枯れ木同様に脆い状態で、硬いものを噛んだりすると、歯根破折を起こす可能性が高くなります。

先日、歯根破折歯保存治療で通われている患者さんが、帰り際に受付で
「神経を抜いた段階で、歯は余生に入るんですね。」
としみじみとおっしゃったそうですが、歯根破折を経験された患者さんの、的を得たお言葉だと思います。
歯根が破折してしまう歯の殆どは失活歯(歯髄の無い歯)ですし、ごく稀に生活歯(歯髄の残っている歯)が破折する場合もあるのですが、失活歯に比べ、総じて治療後の経過も良好です。

最近では神経を残すことの重要性を理解されている患者さんが増えてきて、歯科医師としては非常に喜ばしい事だと思っております。
生活歯が虫歯になってしまった場合、虫歯を削っていったら思ったより深く、歯髄が露出する場合もあるのですが、私は患者さんに状況を説明し、歯髄を保護しながら、なるべく神経を抜かずに保存することをお勧めしています。神経を残して処置を進め、万一、後で具合が悪くなっても、それから神経を取り除けば済むことです。

神経を残す努力をすることにより、結果的に治療回数が増える可能性はあるのですが、長い人生を共に歩む歯です。なるべく「歯が余生に入る時期を先送りする」ことが、QOL(生活の質)を考えた場合、メリットが大きいと思うのですが、如何でしょうか。

「あ、ごめん、割れていなかった・・・・」

院長先生が以前のコラムに書いていらっしゃいましたが、私達スタッフも、歯根破折保存治療を希望され、来院される方が多いことに驚かされます。

歯根破折の治療に関してはインターネットで検索していらっしゃる方が殆どなのですが、歯科医院を何軒が回る方が多いように思います。

先日いらした患者さんもそのような方で、歯科医によって説明がそれぞれ違うので、混乱してしまったが、当院で院長先生の説明を受け、初めてご自身の歯の状況がわかり、非常に勉強になりましたと、お帰り際におっしゃっておられました。

そういえば他の患者さんからも、「こんなにきちんと説明してもらったのは初めてです!」というようなポジティブコメントをよく頂戴します。
院長先生や歯科衛生士が患者さんにきちんと説明をするということは当院では当たり前なので、患者さんにそう言われても、「あ~そうですか?」としかお答えができないのですが、これはきっと実際に体験した患者さんのほうが良くご存じなのかもしれませんね。

さて、この患者さんに話を戻しますと、その方は、以前、他の歯も割れていると歯科医から指摘を受けて抜歯と言われたそうなのですが、実際に抜いてみたら、
「あ、ごめん、やっぱり割れてなかった。」と歯科医師から言われたそうです!
歯が割れていないのに、結果として抜歯になってしまったことをその方は非常に悔やんでおられ、今回は歯科医院選びに慎重になっているとのことでした。

確かに「あ、ごめん」と言われてもですよね・・・その歯はもう戻らないですものね・・・
もしこの方がもっと早くに当院にいらしていたら、抜いて割れていなければ、すぐ歯を戻すことができるので、抜歯せずに済んだかもしれません。

実は私も10か月くらい前にこの治療を受けた患者の一人であります。
おかげさまで治療は成功しましたが、この治療法が当院に導入されていなければ、私も抜歯になっていたかもしれないので、この患者さんのケースは他人事とは思えません。

歯を1本失うという代償を払わなくて済むように、ご自身の身体を大切に考えるなら、歯科に限らず医療機関選びは大切だなぁとつくづく感じた菊地でありました。

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受付 菊地

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歯根破折保存治療の経過(成功率)について

歯の根が割れたり、ヒビが入ったりという破折歯をなんとか抜かずに残すため、破折歯の再植保存治療を始めて4年が経ちました。

この間、歯根破折保存治療を希望して来院された患者さんは300名超。
そのうち、実際にこの治療を受けられた方は100名を超えました。

皆さまが一番気になるところは成功率だと思います。
私は5年以上の保存を目標としており、まだ最長4年しか経っておりませんが、以下、経過報告です。

破折保存治療症例数  103症例
そのうち治療がうまく行かなかったケースが14症例あります。
詳細は以下の通りです。

1 再植不可能 1症例
再植治療中に抜歯となったケースです。この方は非常に歯質が脆く、処置中に歯牙がバラバラになり、もとの歯の形に戻して再植することができませんでした。結果として抜歯になりましたので、当院でブリッジ治療を行いました。

2 固定除去同日脱落 1症例
再植治療を行い、1か月後に固定を除去しましたが、同日に歯牙が抜け落ちたものです。
このケースでは、ご本人が記憶にないほどの長期間、歯根破折の状況が続いていたようです。そのため、再植時に歯根膜が殆ど残っておらず、歯槽骨に歯根が生着しなかったと考えられます。

3 治療後に抜歯となった症例数 12症例
固定除去までは問題は無かったものの、その後の経過が思わしくなく、4年間の間に抜歯となったケースです。
原因としては
再破折 7症例(同じ歯の他の箇所が割れてしまったものも含みます)
動揺 5症例(再植は成功したが、歯の揺れが大きく、実用にならなかったもの)

結論として、4年経過後の治療実績としては、再植した102症例中88症例が現状での成功となり、成功率としては、概ね87%ということになります。

この数字が高いか・低いかは、患者さんご自身の判断に委ねます。
私のこれからの課題としては、3の段階(治療後に抜歯となった症数)をいかに少なくするか?です。

まだ発展途上の治療法ですが、現段階での報告が、多少なりとも歯根破折保存治療を検討されている皆様の参考になれば幸いです。

歯根破折=即 抜歯=インプラント ではありません

歯根破折=即 抜歯=インプラント ではありません

先日、ダイヤモンド社の雑誌で歯の最新治療が取り上げられ、そのなかで歯根破折保存治療も紹介されました。
実際に記者がこの治療を受けた体験談も載っており、歯根破折保存治療も徐々に市民権を得つつあるようです。
この治療を受けられる歯科医院のひとつとして当院も掲載されているからか、歯根破折保存治療についてのお問い合わせが増えています。

以前のコラムでも書かせて頂きましたが、この治療についてのお問い合わせのうち、8~9割が、歯科医師から歯の破折を宣告され、これはもう抜歯してインプラントしかないと説明を受けられた方からのものです。なかにはその日のうちに抜歯しましょうと言われ、気が動転した患者さんは、慌てて逃げ帰ってきました、というケースも伺いました。

あまりに皆さんが口を揃えて「インプラントしかないと言われた」とおっしゃるので、試しにインターネットで破折について検索してみたところ、「歯の根が折れたらインプラント」というような謳い文句の歯科医院が複数あり、あぁ、なるほど、と思いました。

歯の根が折れたり、ヒビが入って歯茎が腫れた、噛むと痛い、こんなに辛いなら抜いてしまったほうが楽だ、と患者さんが訴えるなら、歯科医師はすぐに抜歯の処置に入るべきかもしれません。ただ、患者さんご自身にお困りの症状がないのに、「抜歯してインプラントしかありませんね」と歯科医師にインプラントに誘導されても、患者さんにとってはそれこそ晴天の霹靂で、すぐには抜歯には踏み切れないお気持ちは尤もだと思います。

先日いらした患者さんも抜歯を宣告されてから自宅に戻り、インターネットで検索の結果、歯根破折保存治療を見つけ、この治療を行う1軒目の歯科医院では歯科医師から治療不可能と診断され、2軒目の歯科医院では電話で状況を説明したところ、診察せずにそのまま断られ、3軒目で当院にお越しになり、やっと治療を受けられて無事、治療成功となり、抜歯を免れることができました。

このダイヤモンド社の雑誌には、歯根破折保存治療が受けられる歯科医院として、東京都内で5軒の歯科医院が掲載されています。基本的な治療法は同じだと思いますが、健康保険外の治療法ですので、それぞれの歯科医院で治療費の設定に差があったり、また歯科医師の考え方にも差は出てくるのでしょう。

歯根破折保存治療に関しては、いろいろな考えがあると思います。この治療をなさっていない圧倒的多数の歯科医師にとっては歯の根が折れた=抜歯という考え方が一般的ですし、その延長としてインプラントを勧めるのだと思います。確かに破折した歯をそのまま放置することは、将来的な治療に悪影響を及ぼす心配はありますのでお勧めはしませんが、歯根破折保存治療を行うことにより、抜歯せずに済む可能性があります。
診断の結果、この治療法が適用できず、残念ですが、状況として抜歯しか選択肢が無いというケースもありますが、全ての症例が抜歯の選択肢しかないというわけでもありません。

全ての歯根破折=即 抜歯=インプラント ではありませんのでご安心下さい。

ちなみに私はインプラント専門医の資格を持っていますが、インプラントご希望の方以外に、私からインプラントをお勧めすることもありませんので、こちらもご安心下さい。

歯根破折症例写真

歯を抜いてまでインプラントにするか?(歯根破折保存治療について)

歯を抜いてまでインプラントにするか?(歯根破折保存治療について)

歯の根が割れたり、折れたりという状況下で、なんとか歯を抜かずに残したいと、歯根破折保存治療を希望されて、当院に来院される患者さん方がおられます。
以前のコラムにも書いたのですが、私の想像以上にそのような方が多いことに驚きます。

殆どの場合、患者さんご自身で自分の歯が割れていると判断でいらっしゃるのではなく、現在かかっていらっしゃる歯科医師からその状況を告げられ、初めて抜歯の危機に直面するわけです。

もちろんその歯科医師の下で抜歯に同意されるのなら、インターネットで検索してわざわざ遠方から当院にいらっしゃる必要は無いわけですが、「抜歯といきなり言われても、痛みもないし納得がいかない。なんとか残せないものか」、という患者さんのお気持ちもよくわかります。

来院された患者さん方にこれまでのいきさつを伺うと、かかりつけの歯科医師から抜歯を勧められた方のうち、統計をとったわけではありませんが、おおよそ9割の方が、抜歯してインプラントでの治療を勧められたというのです。驚くべき状況です。口腔内の状況によって治療法の制限はあるにせよ、なぜブリッジや義歯というインプラント以外の選択肢が示されないのでしょうか?

当院のインプラントサイト上の「対談・小宮山彌太郎先生」のなかで、小宮山先生もおっしゃっておられましたが、わざわざ歯を抜いてまで、インプラントを勧めるだろうか?と私も疑問が残ります。それが本当に患者さんのためなのか?と。

歯根破折以外の理由で他院から転院された方も、以前の歯科医師から歯周病が進行した歯を抜いて、インプラントにしましょうと言われたそうです。歯周病が進めば骨の量が少なくなり、基本的にインプラントは困難な状況になります。その方のレントゲン写真を拝見すると、インプラント治療は不可能に近いだろうと私は感じました。

その先生は
「まぁ、インプラントはやってみなきゃわからないけどね」
と言われたそうです。
患者さんにはわからなくても、その歯科医師はインプラント治療の適用は難しいことがわかっていたのではと思います。ですので、恐らくうまくいかないと予想される、その場合の患者さんへの予防線として、上記のような発言をされたのではないでしょうか。

話がそれましたが、歯根破折保存治療の成功率は100%ではありません。癌の手術において、成功率を5年後の生存率ではかるように、この治療法も5年の保存を目標としています。
5年くらいしかもたないなら、潔く、今抜いてしまおうというのもひとつの考え方です。
また、5年以上、うまくいけば、一生もつかもしれないなら、抜いて歯を失ってしまう前に、ワンステップトライしてみようというのも、これもひとつの考え方でしょう。

患者さんのご希望を伺いながら、ベストと思われる医療を提供するのが我々歯科医師の務めです。抜かずに助かるかもしれない歯を抜いて、初めからインプラントを勧めるのは、患者さんのためではなく、何か他の意図があるような気がしてなりません。

ちなみに当院の患者さんが歯を失った場合、私はインプラント・ブリッジ・義歯治療の3つの選択肢のメリット・デメリットの説明をさせていただきます。インプラント専門医だからといって、患者さんがご希望されないかぎり、特にインプラント治療を勧めることはありません。インプラント治療は患者さんにも歯科医師にも覚悟がいる治療だからです。

「まぁ、インプラントはやってみなきゃわからないけどね」
とは、私に自分の大切な患者さんには言えないですね。

歯を抜いてまでインプラントにするか?

意外と多い歯の根の破折(歯根破折保存治療について)

意外と多い歯の根の破折(歯根破折保存治療について)

「他の歯医者さんで、歯の根が割れているので抜歯と言われました。それほど痛みもないし、本当に抜かないといけないのでしょうか?」
最近、よく頂く質問です。歯科界の常識からいえば、抜歯が正しい処置となります。歯が割れたまま放置すれば、いずれ破折部分に細菌が入り炎症を起こし、歯を支える歯槽骨という骨が失われ、その後の治療に支障をきたす恐れがあるからです。

このように歯の根が割れたり、ヒビがはいってしまうことを歯根破折といい、抜歯の原因のひとつになっています。歯根破折を防ぐには、

  • ①できるだけ歯を削る治療を受けない
  • ②歯の神経を取らない
  • ③治療をやり直さない
    • ということが大切です。言い方を変えるならば、

      • ①まず、虫歯を作らない
      • ②虫歯になったとしても、歯の神経を抜かなければならなくなるまで虫歯を悪化させない
      • ③やむを得ず治療を受ける場合には精度の高い治療を受け、再治療を避ける 
        • ということになります。

          それでも残念ながら歯根が破折してしまった場合の治療方法は、前述したように基本的に抜歯です。
          歯ごと炎症を取り除き、歯槽骨の喪失を防ぎます。しかしながらこの方法では歯が失われてしまいます。

          そこで何とか抜かずに保存できないかと研究され、最近、臨床に応用され始めたのが歯根破折保存治療です。従って本治療法をご存じでない先生や診療に取り入れられてない先生がほとんどです。私も半信半疑で講習会に参加したのですが、治療結果に好成績を残していることを確認できたため、当院での臨床に取り入れました。勿論、自分の歯が破折したならば、自分自身もこの治療を受けるという確信があってのことです。

          実際の治療方法としては、破折が小さい場合には口の中で直接修復します。また破折が大きく、直接の修復が難しい場合には、破折した歯を一度抜歯し、特殊な接着剤でつけた後、戻してやります。
          詳細は歯根破折保存治療で説明させていただいておりますので、そちらをご覧下さい。

          これまで抜歯しか選択肢がなかったものを、抜かずに歯を残すことができれば、患者さんにとっては朗報ではないでしょうか。この治療のため、当院にいらっしゃる患者さんもおられますが、破折の状況によって応用できない場合もあり、また、治療ができたとしても100%の成功率ではありません。ですが、もし患者さんがなるべくご自身の歯を残したいというご希望があるのなら、抜歯に踏み切る前に、保存治療をご検討されてもよいのではないでしょうか。抜歯は最後の手段です。