長生きしたいなら医者より歯医者?

2020年、いよいよ東京オリンピック・パラリンピック開催の年となりました。
皆様、本年もどうぞ宜しくお願いいたします。
年末年始の休診中、老後の生き方について特集されたある雑誌の「長生きしたいなら医者より歯医者」という記事が目に留まりました。
記事を書かれているのは歯周病治療を専門とされている歯科医師です。

歯を失う最大の要因が歯周病で、その割合は約40%を占めているという報告があります。次の要因が約30%を占める虫歯で、その次が歯根破折となっています。このなかで最も怖いのは歯周病で、それは以下の理由によります。

まず歯周病は虫歯と異なり、かなり進行するまで症状が自覚しにくい点があります。また、複数の歯が同時に罹患する傾向にあります。ブラッシング時の出血などで異常を確認できますが、殆どの方は見過ごしてしまうか、もしくは気が付いても大したことはないとの自己判断で放置されてしまいがちです。歯がぐらつくようになり、ようやく歯科医院を受診しても、その時には既に重度の歯周病で、そう遠くない将来、一度に複数の歯を失うことになります。

そして、歯を失うことと同時に怖いのは歯周病と全身疾患との関わりです。
歯周病と関係する全身疾患は現在、判っているだけで、糖代謝異常、心臓・脳血管障害、呼吸器系疾患などが挙げられます。何れも歯周病菌あるいは歯周病菌が産生する物質が血管を介して他の臓器に移動することにより引き起こされるのです。具体的な病気としては糖尿病、狭心症・心筋梗塞、アルツハイマー型認知症、誤嚥性肺炎、骨粗鬆症、早産・低体重児、EDなどとなります。

一般的な健康診断や人間ドックでは血液検査、CT検査、レントゲン検査、超音波検査などで体の隅々まで調べるのに対し、歯科検診はオプションですら含まれていないのが現状です。従って歯科医院で定期的に口腔内を診てもらうことは、虫歯や歯周病から歯を守るだけでなく、全身疾患を予防するという重要な意味合いを持っていると言えます。
また、虫歯や歯周病のみならず、芸能人が患ったことで有名になった口腔ガンなどの軟組織疾患もあります。全身のPET検査で発見されることもありますが、歯科医院で口腔内を診てもらえば容易に発見できます。

当院は京橋というオフィス街にあるため、多くのビジネスパーソンが定期検診にお越しになりますが、お忙しい方ほど会計時に3ヶ月後、6ヶ月後と次回の検診のお約束を取って行かれるようです。口腔内を健康に保つことの重要性を理解されていらっしゃるのだと思います。

本コラムをお読み頂いている皆さん、医者より歯医者が大事かどうかは別として、健康寿命を延ばすことを希望されるのであれば、歯の健康を保つことは重要です。
歯科医院で定期的なケアを受けて頂くことをお勧めします。

吉田デンタルクリニック
院長 吉田 浩一

「自覚症状が無いので歯の定期検診に行かなくても良いですか?」

先日、歯の定期検診のご連絡を差し上げた患者さんから、「定期検診ですが、自覚症状が無いので行かなくても良いですか?」とのお電話を頂戴しました。

ご高齢で遠方からお越し頂いている方なので、「特に痛みも無いし、問題も無いから、わざわざこの寒い時期に行かなくてもいいんじゃない?」とのお気持ちは、受付はよ~くわかります。

ただ、患者さんのお口の中の状況がわからない受付の私が、電話口で「お痛みが無ければ、お越し頂かなくても大丈夫ですよ~。」と申し上げることは出来かねます。
なぜかというと、患者さんを脅かすわけではありませんが、自覚症状がなくても前回の検診からの間に、お口の中に何らかの問題が起きている可能性があるからです。

例えばですが、
① 歯周ポケット検査を行ったら、1か所、前回より急に数値が悪くなり、歯根破折が疑われる
② 神経を抜いてある歯に虫歯が進行してしまったが、神経を抜いている歯なのでご自身では痛みは感じなかった
③ (稀ですが)、痛みは無いが、舌の病変が見受けられるために大学病院の専門歯科にご紹介した

受付が患者さんのお会計をしながらカルテをチェックし、思いつくものだけでもこれだけあります。院長先生や歯科衛生士さんに聞いたらもっとあると思います。

ご自身の健康に留意される方なら、特に自覚症状が無くても1年に一度、(中には半年に一度と言う方もおられるそうですが)医科の人間ドックを受診されますよね。
歯科でも同様です。暖かくなるまで数か月検診をずらしても大事にはならないとは思いますが、自覚症状が無いから定期検診に行かなくても良いか?についてのお答えは、残念ながら上記のとおりで“No”でございます。

ちなみに私事で恐縮ですが、昨年末に久しぶりに胃の内視鏡検査を受診しました。ずっと診て頂いている先生で、「あなたはがんにはなりにくいタイプですよ」と以前仰っていただいたことがあり、楽観視してしまったことと、忙しさにかまけて3年ぶりに受診したら、なんと胃に緩やかな盛り上がりが見つかり、組織を採取し精密検査となりました。
恐る恐る年明けに結果を聞きに行ったところ、幸い悪性では無かったのですが、もし悪性だったとしたら、3年間も検査をしなかったこと後悔したと思います。
「後悔先に立たず」となったかもしれません。脅かすわけではありませんが、自己判断はキケンだとつくづく思いました。

お口は体に食べ物が入っていく消化器の第一番目の大切な場所です。
自覚症状が無くても定期的に検診を受け、歯石を取ってお口の中のバイキンを減らし、また問題が起きてしまった場合でも、小さな芽のうちに摘み取ってしまいましょう!

吉田デンタルクリニック
受付 菊地

歯周病の検査を受けてみませんか?

こんにちは、歯科衛生士の児嶋です。
当院では、お口全体のチェックやクリーニングを受けて頂く際に、以下のことを行います。
まず最初に現在のお口の中の記録を取ります。次にクリーニングを前回いつ受けたか、今までに歯周病の検査を受けた事があるかどうかを確認しています。

お話を伺っていると、「定期的にクリーニングを受けていたが、検査は初めてです。」とか「多分、受けた事がある。あのチクチクするやつですよね?」といったように、初めて受ける方や、受けたことがあっても歯周病の検査について、説明を受けた事が無いと仰る方が多い事に驚きました。

そこで今回は歯周病の検査、特にその中でも大切なプロービング検査についてお話させていただきますね。
プロービング検査とは、歯周ポケット(歯と歯ぐきにの間の溝)の深さをプローブという物差し状の器具で計測する検査です。
当院ではそのプロービング検査を、1本の歯について6個所、測定する精密検査を行っています。深さの計測に加え、プローブを入れたときの出血の有無や(炎症状態をチェックしています)、歯石の沈着状況、歯の根の形等を調べ、沢山の情報を集めています。
細かい作業ですので、時間がかかる事と、ポケット内を触られる感覚が決して気持の良いものではありませんので、苦手な方も多いと思います。

皆様ご存知の通り、歯周病は歯を失う原因のトップですが、罹患しても初期や中程度では自覚症状がありません。痛みや歯が揺れるといった自覚症状が出たときにはすでに重度まで進行してしまっているため、早期発見や予防が大切となります。
当院の検査で初めて歯周病の診断を受けた方も多くいらっしゃいます。ご心配の方は一度、歯周病の検査を受けてみませんか?

吉田デンタルクリニック
歯科衛生士 児嶋

この歯と100年生きていく

リンダ・グラットン 著「ライフ・シフト」という本に記されているように、これからの若い人は人生が100年になっていくようです。

戦国時代の武将、織田信長の言葉に「人間50年」という文言があります。
本来は平均寿命のことを指しているのではありませんが、1600年代の人たちに較べ、2000年代の人は倍も生きていくことになりました。従いまして、臓器を含めた体もこれまでの2倍、使っていくことが要求されます。歯に関しても同じです。

「8020(ハチマルニマル)運動」というものをご存知でしょうか。
満80歳で20本以上の歯を残そうとするのが主目的で、運動が開始された1989年の達成率は15%程度でしたが、近年では50%に達したとされています。
現在、日本には100歳以上の方がおよそ7万人いらっしゃるようです。この方々に何本の歯が残っているかは不明ですが、「10020(ヒャクマルニマル)」の達成率はかなり低いものと思われます。歯には定年制度というものがないので、これまで以上に長く働くことが要求される歯も大変なことです。

では100歳まで長く歯を残していくにはどうしたらよいのでしょうか。

月並みなお答えになりますが、毎日の正しいセルフケアと、定期的なプロフェッショナルケアが大切です。定期的に歯科医院に通うことにより、歯周病や虫歯になってしまった場合でも、早期発見が可能ですし、ご自身の歯に対する意識の高まりが期待されます。

歯を失う理由としては ①歯周病、②虫歯、③歯根破折の順となっています。
当院では虫歯のチェックには目視に加えレーザーを使用しており、客観的な数値で患者さんに虫歯の状況をお伝えするのですが、「まだ痛くないから・・・」と、治療されない患者さんもいらっしゃいます。
ただ、痛みが出たら神経まで感染が及んでいる可能性が高く、神経を取る治療が必要になります。神経を取ることにより歯根破折を起こしやすくなり、歯の喪失への大きな前進です。

また、虫歯は一旦治療すれば、もう虫歯にならないとお考えの方もおられるのですが、それは大きな誤解です。修復物と歯の隙間から虫歯菌が侵入し、二次虫歯になる可能性は充分にあります。この二次虫歯になる時期をいかに先延ばしにするか?が、歯を長く残すためには、とても重要なのです。

二次虫歯を防ぐためには、詰め物・被せ物の精密な型採りを行い、丁寧な修復治療をしてもらうことに尽きますが、当然、時間と費用がかかります。しかしここで投資しておかないと、その先の治療には更に多くの時間と費用が要求され、それが受け容れられない場合には歯の喪失に向かってまっしぐらでで、とても100年は使えません。

如何にきちんとした治療を受け、再治療を先延ばししていくか?が長く使えるかどうかのポイントになります。

私はこの点をコンサルテーション時に患者さんに力説しているのですが、「前歯は綺麗なのがいいので白いセラミックにするが♪、奥歯は見えないから(精度の低い)銀歯で大丈夫♪」という方が多いのが現実です。これでは「奥歯は早く失っても構わない。」と仰っているのと同義です。
私の説明が不十分なのかもしれませんが、一度抜けたら二度と生えてこないご自分の歯を、どれだけ長く使う必要があるのか?という自覚が、残念ながらあまり認識されていないことを痛感します。

歯が無くなってしまえば、入れ歯やインプラントで修復可能ですが、入れ歯はその使い勝手からQOL(生活の質)が下がることが懸念されます。またインプラント治療は外科手術を伴いますので、誰でも簡単に受けられる治療ではありません。
また、受けられたとしても、高額な費用とエネルギーが要求されます。(抜歯を宣告されたが、抜歯したくないとお考えの方は、歯根破折保存ページを参考になさってください。)

皆さん、頑張ってご自分の歯を100年使いましょう。しかし、かく申す私も昨年、1本の歯を失ってしまいました。残った27本をあと40年使っていかなければ!です。

喫煙席がなくなる?

こんにちは、歯科衛生士の児嶋です。

6月27日のニュースで東京都独自の受動喫煙防止条令案が可決されたと知りました。
内容は従業員雇う飲食店で原則禁煙という国会で審議中の健康増進法改正案よりも厳しい規正だそうで、東京五輪・パラリンピック直前の2020年4月に全面施行するそうです。

喫煙者にとっては辛いお知らせになったと思いますが、禁煙やお体の事を改めて考えていただくきっかけになれば良いなぁ、というのが歯科衛生士としての私の本音です。

タバコの煙の成分であるニコチンは脳内ではドーパミンを放出して快感を生みます。
しかし体内のニコチンは30分もすると切れるので、すぐにまた喫いたくなるという依存状態になりやすく、繰り返しの摂取により有害成分や発ガン物質が体中の細胞を傷つけ、循環器、呼吸器がん、生殖系への障害をもたらすそうです。

口腔内への影響ですが、歯肉の着色は受動喫煙でも見られます。
ニコチンやタールなどの有害物質から歯肉を守るためメラニン色素をつくり歯肉が黒ずむ原因となるのです。

また、喫煙は歯の着色沈着や、歯周病における大きなリスクファクターとなります。
ニコチンの血管収縮作用により炎症がわかりにくく、一見歯肉は引き締まって見え、歯周炎の特徴である歯肉からの出血も少ないので、罹患している事に気づいていない方も多いです。
歯周治療後の歯肉の変化が出にくく、予後も良くないので、結果として歯を失うリスクが高まります。
悲しいですね・・・

最近よく目にする新型タバコの加熱式の電子タバコですが、紙巻きの物に比べて健康被害が10分の1程度と言われており、タールがほとんど出ないのが特徴です。
このタールには有害作用を示す一方で、抗炎症作用があるので、紙巻きタバコから電子タバコに変えて、歯が痛む様になった方がいらっしゃるそうです。もともと、歯周病がある方で、隠れていた症状が表面化したのではないかと考えられています。

嗜好品ですし、体に悪いのはわかって吸っているよ!と喫煙者の方はお思いになると思いますが、
皆さまに長く健康で居て欲しいという思いから禁煙をおすすめしています。

タバコは吸わないよ~という方も、受動喫煙でも口腔内に影響がある事を知っていただけたら嬉しいです。

吉田デンタルクリニック
歯科衛生士 児嶋

歯周病はなぜ痛まないの?

歯科衛生士の青山です。
定期検診の際、当院では最初に歯周ポケット検査を行なっております。少しチクチクしますが、歯周病の進行具合を知るための大切な検査です。

1年ほど前に他院から転院された患者さんなのですが、検査のデータが悪化しており、数か月毎のクリーニングだけでは改善が難しくなったため、歯周ポケットの深い部分をお掃除する歯周治療をお受け頂くことになりました。
前の歯科医院さんでは長く検診には通っていらしたようなのですが、今まで痛みもなく、よく噛めていたので、まさか私が歯周病だなんて夢にも思わなかった・・・とおっしゃっておられました。

その方から
虫歯は痛くなるのに、どうして歯周病は痛くならないの?」とご質問を受けました。
私達歯科衛生士は歯周病のメカニズムを理解しているので痛みが出なくても特に不思議には感じませんが、そうですよね、患者さんにとっては素朴な疑問だと思います。

その理由は、歯周病はかなり進行するまで痛みが出にくいからなのです。なぜ出にくいかというと、歯周病は歯周ポケットに入り込んだ歯周病菌が起こす病気です。歯周病菌に感染すると膿が生じるのですが、初期の段階では歯周ポケットから排出されるため、痛みが生じないのです。

ところが歯周病が進行すると歯周ポケットの深いところで膿が生じ、外に出にくいので歯周組織が圧迫され、痛みを感じ始めるのです。
自覚症状がないため歯科にかからず、痛みが出て検査を受けたら、すでに重症化しているという診断を受ける場合が多いのが歯周病の特徴と言えます。

歯周病は日本人の約80%が罹患していると言われ。現在、虫歯に次いで歯を喪失する原因の第2位で、約半分を占めるとも言われています。(ちなみに第3位が歯根破折によるものです。)

歯周病を防ぐには、毎日の正しい歯磨きで確実に歯垢を除去し、定期的に歯科医院で検診を受け、予防する事が何よりも大切なのです。歯が揺れたり、歯茎から出血する場合には、手遅れになる前に、歯科を受診なさってくださいね。

吉田デンタルクリニック
歯科衛生士 青山

歯科定期検診での気づき

こんにちは 歯科衛生士の島村です。
先日6か月の定期検診にいらした患者さんのお話です。

いつも通りに歯周病の検査をすると、これまでずっと問題が無かったのに出血している箇所が増えていました。

ホームケアで何か変わった事はなかったか伺ったところ、前回の定期検診時はデンタルフロスを毎日使用していたけれど、最近、少しサボり気味なんです・・・“とのことでした。
まさかこんなに顕著に結果が出るなんてびっくりです。ともおっしゃっておられました。

そうなんです!たかがデンタルフロスと思われるかもしれませんが、以前のブログにも書かせて頂いたように歯ブラシも歯間ブラシ届かない歯間の清掃に、デンタルフロスは必要不可欠なものです。歯ブラシとセットで行うことでより口腔内の菌のコントロールに役立ちます。

実際に定期検診にいらっしゃらなければ気づかなかった変化です。
早目に歯肉の炎症のサインに気づくことが出来れば、そこからまたケアを再開して歯肉を健康な状態に戻すことも可能です。

患者さんと一緒に、歯科衛生士の私も定期検診の重要さを、より気付かされた出来事でした。

吉田デンタルクリニック
歯科衛生士 島村

Miniature People Sitting on a Dental Mirror.

Miniature People Sitting on a Dental Mirror.

杭工事データ改ざんから医療の倫理について考える

杭工事データ改ざんから医療の倫理について考える

少し前になりますが、横浜のマンションの基礎杭工事で、データの不正改ざんが発覚しました。
その後、全国で同様の問題が次々と報告され、業界全体を揺るがす大きな問題になっています。

一連の報道を見ながら、私はある患者さんのことを考えていました。
この方は、ご自身のご両親の代から同じ歯科医院におかかりで、口腔内を拝見すると全て保険外の被せ物で修復されており、これまでかなりの額の治療費をかけられていると推測されました。

ではなぜこの方が当院にいらしたかというと、歯茎からの出血が続いていたため、かかりつけの歯科医に相談したところ、問題は無いと言われ(!)、次に内科医に相談したところ、全身的な問題で歯茎からの出血が常態化するとは考えにくく、歯の問題である可能性が高いとのご判断で、その内科医の紹介で当院にいらしたのです。

歯茎からの出血で最初に疑われるのは歯周病です。
歯周精密検査の結果、健康な歯茎であれば深さ2~3ミリであるはずの歯周ポケットが、浅いところでも7ミリ、奥歯は10ミリ以上で、全ての歯から出血が確認されました。

これは明らかに重度の歯周病です。
歯科医師ならこの重度の歯周病に気づかないはずはありません。
また、ここまで歯周病が進行するには、かなりの年月がかかっているはずです。
当院でただちに歯周病治療を開始しましたが、残念ながら既に保存不可能な歯もありました。

患者さんは長年、口臭と歯茎からの出血に悩み、歯槽膿漏(歯周病)ではないか?と何度尋ねても大丈夫と言われ続け、また、一度も歯周病検査を受けていなかったそうです。
かかりつけの歯科医はもちろん患者さんの歯周病はわかっていたはずですから、憶測ですが、(敢えて)告げなかったのではと思います。

ではなぜ告げなかったのか?
自院では歯周病治療を行っていなかったのかもしれません。歯周病治療は場合によっては痛みや腫れが伴います。セラミックを被せたり、ホワイトニングで歯を白くしたりなど、見てすぐ効果がわかるわけではないので、患者さんにはあまり嬉しくない治療かもしれません。
ですが、歯の土台をしっかりさせて、歯を長く持たせるためにはどうしても必要な治療であり、これは歯科医師であれば誰でも知っていることなのです。

杭工事データ改ざんから医療の倫理観について考える

杭工事の問題に戻りますが、テレビ番組の解説で、ある大学教授が、これは「住民に対する裏切り行為である。」と話されていました。
大手のデベロッパーの物件であることに信頼を寄せて、マンションという高額な買い物をしたのです。まさか基礎の杭打ち工事のデータに不正があったなどと、考えてもみなかったことでしょう。

この患者さんの場合も、残念ながら同様の状況ではないでしょうか。
歯を支える土台の工事(歯周病治療)をせず、綺麗な被せ物を入れてしまえば、患者さんにはその下は見えないからいいだろうということなのでしょうか。
ふと思ったのですが、このような治療は、杭工事の問題同様、日本全国で広く行われていることなのでしょうか。この患者さんがたまたま当院にいらしたので、私が気がついてしまっただけなのでしょうか?

どのような職業であれ、倫理は必要ですが、人の身体に責任を持たねばならぬ医療人は、より崇高な倫理が要求されるものと私は考えています。
歯周病があり、土台の具合が悪いところに高額な修復物を入れることなど、私には考えられないことです。

私が今すべきことは、この患者さんができるだけ長く、ご自身の歯で快適に噛めるような治療を行っていくことです。歯科医師としての倫理に従い、自分自身に恥じることのない治療をこれからも行っていきたいと、改めて再確認した出来事でした。

シニア世代の後悔第1位は・・・

シニア世代の後悔第1位は・・・

気持ちは若いつもりでも、いつの間にやら私も50代半ばとなり、自宅近くのシニアセンター(概ね50歳以上の方向けだそうです。)も利用可能な年代となりました。そろそろ老後のことを考える年になったわけですが、混迷する日本の政治を考えると、漠然とした不安はぬぐえません。
それで先日、手に取った雑誌が「プレジデント」、特集は「金持ち老後、貧乏老後」です。

特集の中で興味深かったのは、リタイア後のシニア1000人へのアンケート調査の結果です。アンケートの内容は「リタイア前にやるべきだったこと」で、調査の結果、健康に関する後悔のトップ3は以下のとおりです

第3位 「日頃からよく歩けばよかった」
第2位 「スポーツなどで体を鍛えればよかった」

そして、栄えある?第1位は
「歯の定期検診を受ければよかった」
そして特集の見出しには、「歯を失うと家計まで苦しい」ともありました。

リタイア前にやるべきだったこと

リタイア前にやるべきだったこと

読んでいて成程、と思いました。
歯に限らずですが、定期的に検診を受けている方の場合、問題が見つかった場合でもいきなり手遅れということはまず無いと思われます。例えば歯周病や虫歯が見つかっても初期の段階であれば治療に踏み切らず、定期的に数値を確認しながらご自身でのホームケアで現状維持できることもあります。

ですが痛くなって歯科医院に駆け込んだ場合、既に病気が進行し、残念ながら抜歯しか選択肢が無い場合もあります。歯を抜いてそのまま放置するわけにもいかず、ブリッジ・入れ歯・インプラントなど、欠損した歯を補う治療(補綴治療)に移行せざるを得なくなり、想定外の治療費がかさむことになるかもしれません。よって「歯を失うと家計まで苦しい」に結びつくのでしょう。

同じ特集内で、私が登録医をさせていただいている聖路加国際病院の日野原重明先生も、糖尿病の原因のひとつとして歯周病を指摘されています。「歯の健康を保つことこそ長寿の秘訣」とおっしゃる日野原先生ですが、100歳を越えて現役の医者の言葉には説得力があります。

当院も今年で開院17年目に入りますので、近隣のオフィスから長く通って下さった方が退職されて、ご自宅から定期検診にお越しになる方が増えてきました。ご自宅近くにも歯科医院は沢山あるでしょうが、遠方からお越しいただけるのは有難い限りです。そのような方々が身体的にも精神的にも若々しく、リタイア後の人生を楽しんでいただくことが出来るように、シニア世代の一員である私は今年も頑張ります。

以下は2012年11月号「プレジデント」より、「健康」についての抜粋です。

リタイア前にやるべきだったこと(フルサイズ)

リタイア前にやるべきだったこと(フルサイズ)

あなたの歯科検診は大丈夫ですか? - 歯周病検査の重要性 -

あなたの歯科検診は大丈夫ですか? - 歯周病検査の重要性 -

先日、暫くぶりで定期検診にいらした患者さんのお話です。
その方は10年来、当院にお越しいただいておりましたが、お仕事のご都合で転院されたのです。
ですが、戻っていらしたのでその理由を伺ってみると、
「今、かかっている歯科医院では定期検診といっても表面の汚れを落とすだけで、歯周病の検査をしてくれない。心配になったので、こちらで診て欲しい。」
とのことでした。

さっそく歯周病の検査をさせていただきましたが、当院を離れてから1年ほどでしたので前回の検査時から歯周病の数値に大きな変化も無く、患者さんは安心してお帰りになりました。
その際、ひとくちに歯科検診と言っても、医院によりずいぶんと内容に違いがあるものだと初めて気付かされました。そう言えば当院に初診でいらした方で、
「歯石を取ったことはあるが、歯周病の検査は初めて。」
とおっしゃる方が少なくありません。「あ~、なるほど」と納得いたしました。

あなたの歯科検診は大丈夫ですか?歯周病の検査とは、歯と歯茎の間の溝の深さ(歯周ポケット)を測定するものです。
チクチクする感じが苦手な方もいらっしゃるのですが、病気の正確な診断のためには欠かせない検査です。歯周病が進行すれば炎症により骨が溶けて減少し、骨の中に埋まっている歯の根が露出してきて歯がぐらぐらしてきます。
骨の状況はレントゲンでもわかりますが、歯周ポケット検査で歯の表側が何ミリ、裏側が何ミリというように露出度を測り、この数値により客観的に歯周病の状況が把握できますので、より的確な診断が可能になります。ちなみに当院では歯周ポケットのデータをパソコンに保管しておりますので、定期検診毎に数値の変化を容易に比較することができます。

歯周病の検査や治療をせずに歯茎の上に出ている歯の修復治療をすることは、私に言わせれば家を建てる際、測量や基礎工事をせず、いきなり上モノを作るようなものです。いくら見た目が綺麗でも、土台がしっかりしていなければ家は長持ちしません。歯も同様です。

歯周病は、虫歯と違って、痛みなどの自覚症状がなく進行する病気なので、程度にもよりますが、実は虫歯より深刻な病気なのです。また、近年の研究結果より、歯周病が糖尿病や心臓疾患の一因となることもわかってきました。ご自分の歯、ひいては生命を守るため、歯の定期検診時には是非、歯周病の検査も受けていただきたいと思います。