「金」と「銀」では大違い

院長のコラム

「金」と「銀」では大違い

いよいよソチで冬季オリンピックが開幕しました。
選手にとってメダルに手が届くか否か、また獲れたとしても金と銀では大違いです。
けれども歯科治療の場合、金と銀では1位・2位という順位以上に大きな差があります。
少し長くなりますがお付き合い下さい。

先日、定期検診にお越しになった患者さんのお話です。虫歯ができてしまい、歯を削って詰め物をすることになりました。治療には健康保険の範囲内と自費治療の選択肢があること、それぞれの治療法や材質の違いを説明し、次回のご予約時までにお決めいただくようにお願いしました。
それでご予約のお電話で患者さんがおっしゃったのが、
「今回は金歯ではなくて銀歯にします。」でした。

もちろん患者さんの選択された治療法を尊重しますが、何となくその言葉に違和感を覚えふと頭に浮かんだのが、「ひょっとして患者さんは、単に詰め物の材質の違い(金と銀)、これが自費と保険の治療の差だと考えているのでは?」という疑問でした。
当方の説明不足かもしれませんが、もしそうなら同様に考える方が他にいらっしゃるかもしれないので、改めて健康保険の治療と自費治療の違いをおさらいしてみたいと思います。

院長コラム19

歯科治療には大きく分けて健康保険の範囲で行う保険治療(現在の患者負担は治療費の1割・もしくは3割)と、全額ご自身でご負担いただく自費治療とに分かれます。
保険治療では、治療費は全国一律で国により定められており、沖縄でも東京でも北海道でも同一です。また国家試験を受かったばかりの1年目の歯科医師でも、私の父のように50年以上の経験のある歯科医師でも治療費は同一です。

大正時代に制定されたわが国の健康保険は、誰でも一定の医療が受けられる優れた皆保険制度ではありますが、命に係る医科では治療費が高く設定される一方、医科ほど緊急性が高くない歯科では、当面、歯が残って噛むことが出来ればよいわけで、見た目の美しさ(審美性)や、長持ちする精密な治療は残念ながらあまり考慮されておりません。

健康保険の基本的な概念が制定後90年以上を経た現在でも変らないなか、日本国民の寿命は大幅に伸び、生活の質が重要視されるようになった結果、“とりあえず”ではなく、“質が高く長持ちする”歯科治療が要望され、その結果、生まれたのが健康保険制度に縛られない自費治療です。

さて、歯の詰め物の話に戻りますが、保険治療では前述のように治療費が決まっていますから、使用できる材質はおのずと限られ、当院では金とパラジウムの合金を使用しています。いわゆる銀歯です。純粋な銀も使用できますが、変色し、質に劣るため当院では扱っておりません。

一方、自費治療では材質は自由に選択することが可能です。審美性を重要視する場合、歯と同じ色の白い詰め物でもいくつか種類がありますし、とにかく虫歯になりたくないことを最優先し、目立たない部位なら18金、もしくは20金の金合金を使うこともできます。また金色はいやだからとプラチナ合金を希望される方もおられます。この場合、見た目はいわゆる銀歯ですが、健康保険の銀歯とは全く異なります。ちょっとややこしいですね。

では次にもう一つの大きな相違点である、「適合性」についてお話しします。

虫歯には、全く治療を受けていない歯が虫歯になる一次虫歯と、一度治療した歯が再度、虫歯になる二次虫歯とがあり、圧倒的に後者による原因が多くなっています。二次虫歯は詰め物と自分の歯との隙間に発生するため、これを避けるためにはなるべく隙間が出来ない精密な型採りをし、模型にピッタリ適合する詰め物を作製する必要があります。
そのために歯の型採りの際に使う材料も保険と自費では異なります。さらに、当院では詰め物を作る技工士も健康保険とは異なる技術の高い技工所にお願いしています。当然、技工料はかかります。

ここまでを要約すると、保険治療と自費治療の違いを挙げると、

  • 1:治療の精密さ(歯科技工の精密さを含む)
  • 2:材質

この2つになります。患者さんが最も気にされる材質は、専門家の目からすると、実は2番目なのです。

歯科治療に対する当院の基本的な考えは
「精密でやり直しの無い治療を行い、その後、定期的なメンテナンスを受けていただき、長期間、口腔内を良好な状態に保つ」
ということです。

ただ、患者さんの価値観は様々で、説明を聞いて、歯のことだけを考えれば自費治療を受けたいが、諸事情で今回はとりあえず保険治療で、ということもあるでしょう。
保険治療は当面のコストが低いという良さはあります。ただ、二次虫歯になりやすいため再治療を繰り返すことで費用がかかり、さらに深刻なのは、治療の繰り返しによりだんだんと歯が無くなり、最後には抜歯となって、ブリッジ・インプラント・義歯などで失った歯を補う治療にまた費用がかかってしまいます。
また、違いはよくわからないが、とりあえず保険でと希望される患者さんもおられます。このような場合、敢えて自費治療の説明はしないのですが、治療を終わって違いを聞かれて、だったら自費にしたのに、とおっしゃる方もたまにおられますが、残念ながら後の祭りです。

今回のコラムは長くなりましたが、お伝えしたかったのは、保険治療と自費治療の違いは金・銀という色だけではないということなのです。
これからの皆様の歯科治療の治療法の選択の参考になれば幸いです。

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