歯を抜いてまでインプラントにするか?(歯根破折保存治療について)

院長のコラム

歯を抜いてまでインプラントにするか?(歯根破折保存治療について)

歯の根が割れたり、折れたりという状況下で、なんとか歯を抜かずに残したいと、歯根破折保存治療を希望されて、当院に来院される患者さん方がおられます。
以前のコラムにも書いたのですが、私の想像以上にそのような方が多いことに驚きます。

殆どの場合、患者さんご自身で自分の歯が割れていると判断でいらっしゃるのではなく、現在かかっていらっしゃる歯科医師からその状況を告げられ、初めて抜歯の危機に直面するわけです。

もちろんその歯科医師の下で抜歯に同意されるのなら、インターネットで検索してわざわざ遠方から当院にいらっしゃる必要は無いわけですが、「抜歯といきなり言われても、痛みもないし納得がいかない。なんとか残せないものか」、という患者さんのお気持ちもよくわかります。

来院された患者さん方にこれまでのいきさつを伺うと、かかりつけの歯科医師から抜歯を勧められた方のうち、統計をとったわけではありませんが、おおよそ9割の方が、抜歯してインプラントでの治療を勧められたというのです。驚くべき状況です。口腔内の状況によって治療法の制限はあるにせよ、なぜブリッジや義歯というインプラント以外の選択肢が示されないのでしょうか?

当院のインプラントサイト上の「対談・小宮山彌太郎先生」のなかで、小宮山先生もおっしゃっておられましたが、わざわざ歯を抜いてまで、インプラントを勧めるだろうか?と私も疑問が残ります。それが本当に患者さんのためなのか?と。

歯根破折以外の理由で他院から転院された方も、以前の歯科医師から歯周病が進行した歯を抜いて、インプラントにしましょうと言われたそうです。歯周病が進めば骨の量が少なくなり、基本的にインプラントは困難な状況になります。その方のレントゲン写真を拝見すると、インプラント治療は不可能に近いだろうと私は感じました。

その先生は
「まぁ、インプラントはやってみなきゃわからないけどね」
と言われたそうです。
患者さんにはわからなくても、その歯科医師はインプラント治療の適用は難しいことがわかっていたのではと思います。ですので、恐らくうまくいかないと予想される、その場合の患者さんへの予防線として、上記のような発言をされたのではないでしょうか。

話がそれましたが、歯根破折保存治療の成功率は100%ではありません。癌の手術において、成功率を5年後の生存率ではかるように、この治療法も5年の保存を目標としています。
5年くらいしかもたないなら、潔く、今抜いてしまおうというのもひとつの考え方です。
また、5年以上、うまくいけば、一生もつかもしれないなら、抜いて歯を失ってしまう前に、ワンステップトライしてみようというのも、これもひとつの考え方でしょう。

患者さんのご希望を伺いながら、ベストと思われる医療を提供するのが我々歯科医師の務めです。抜かずに助かるかもしれない歯を抜いて、初めからインプラントを勧めるのは、患者さんのためではなく、何か他の意図があるような気がしてなりません。

ちなみに当院の患者さんが歯を失った場合、私はインプラント・ブリッジ・義歯治療の3つの選択肢のメリット・デメリットの説明をさせていただきます。インプラント専門医だからといって、患者さんがご希望されないかぎり、特にインプラント治療を勧めることはありません。インプラント治療は患者さんにも歯科医師にも覚悟がいる治療だからです。

「まぁ、インプラントはやってみなきゃわからないけどね」
とは、私に自分の大切な患者さんには言えないですね。

歯を抜いてまでインプラントにするか?

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