歯科医療の保険給付について考える

院長のコラム

歯科医療の保険給付について考える

以前の私のコラム「シニア世代の後悔第1位は・・・」では、雑誌「プレジデント」の「金持ち老後、貧乏老後」という特集で、リタイア後のシニアに行ったアンケート、「リタイア前にやるべきだったこと」の調査結果について書かせていただきました。ご興味のあるかたはこちらからご覧ください。

この特集は2年前ですが、よほど反響が大きかったのか、プレジデント社は今年も同じ特集を組んでいます。老後が気になる世代に突入している私も読んでみたところ、今回は世情を映してか、前回に比較してより切実な、悲壮感漂う内容になっているように感じました。

今回の特集では歯科に特化したコメントはなかったものの、「リタイア後に待ち受ける6つの強敵」のなかのひとつに、「医療費負担アップ」が挙げられていました。
「病院に行けない時代到来」とも書いてあり、なんともショッキングな見出しです。

確かにこれだけ高齢化社会が進み、日本人の寿命が延びれば、いくら「ピンピンコロリ」が理想と言っても、いつかは医療機関のお世話にならざるを得ないのが現実です。高齢化に加え、急激な少子化で現役世代は減る一方ですから、増え続ける高齢者の医療費を現役世代が支えるという現在の公的医療保険を、将来にわたって維持できると考えるのは、確かに楽観的すぎるかもしれません。

現に、今年4月よりこれまで1割負担で済んでいた前期期高齢者(70歳~74歳)の窓口負担が2割へ引き上げられました。国民健康保険はもとより、組合健保も8割は赤字だそうです。さもありなんです。

現在の日本の公的医療保険は、国民が皆平等に一定の医療を受けられる優れた制度です。
では海外ではどのようなシステムなのか、歯科医療に限って健康保険給付状況を調べてみました。

健康保険連合会が行った海外の医療保障についての文章を読むと、予防に力を入れるヨーロッパ諸国では、歯科医療は健康保険の対象外というところが多いようです。
また日本の保険制度のモデルとなったドイツでは、虫歯や外科処置等は保険の対象になるが、補綴治療(詰め物をする治療やブリッジ、義歯など)は対象外になっています。また、定期検診を受けていれば治療費が安くなるというシステムもあるようです。いずれにせよ、歯科治療全般が公的保険でカバーされる国は、先進国では日本くらいではないでしょうか。

本文

先日、虫歯の治療にいらした患者さんに、健康保険の治療と自費治療との違いについて説明させていただいたところ、保険内の治療で良いとのことでした。理由は、「どうせまたすぐ虫歯になるから、なったらその時また治療すればいいから。」とのことでした。虫歯の自費治療費が数万円になるのに比べ、保険では数千円で治療できるため、たとえ治療の精度が劣って繰返しの治療になったとしても、経済的負担が少ないほうがいいとのお考えなのだと思います。

ただ、歯科治療についてひとつ注意しなければいけないのは、歯は再生しないということです。風邪は完治すれば元の体に戻りますが、虫歯の治療を行えば、体の一部が削られて無くなり、いくら詰め物で補っても決して体は元通りではないということです。そして治療を繰り返せば、当然ながら体の一部はどんどん少なくなってしまいます。

以前、30年後の日本を想定した小説を読んだのですが、インフレが進んで物価高となり、スターバックスのコーヒーが1000円を超え、歯科医療は保険から外されたという設定になっていました。コーヒー価格はわかりせんが、後者に関してはかなり現実味があると思います。歯科治療が健康保険から外されれば、現在のような安価で治療を受けることはできなくなるでしょう。

「保険を使えば安いから、とりあえず保険で治療して、また虫歯になったらその時治療すればいいや」
と安易に現在の健康保険に寄りかかっていると、いずれ取り返しのつかない事態になるかもしれません。

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