ブローネマルク・システムを知らない?

院長のコラム

ブローネマルク・システムを知らない?

先日インプラント学会認定専門医の資格取得を目指す歯科医師向けに、1年間にわたる講習会の第1回が開催され、講師の一人として講義をさせていただきました。講習会終了後、聴講者の一人である先生が私のところに質問に見えたのですが、その質問の内容が・・・

「先生、今日は有意義なお話を有難うございました。ところで先生が講義の中で話されていたブローネマルク・システムというのはすごいですね。どんなインプラントなのですか?
ノーベルバイオケアとか、3iとかなら知っているのですが。」

私は唖然としました。
インプラントの専門医を目指す歯科医師が、ブローネマルク・システムを知らない???

インプラント治療を手がけているまっとうな歯科医師であれば、この私の驚きがどれほどのものか、ご理解いただけると思います。ただ、一般の方にはわかりにくいと思いますので少し解説させて頂きますと、ブローネマルク・システムとは、スウェーデンのイエテボリ大学医学部のブローネマルク教授が世界で初めてチタンと骨との結合を発見し、その教授が開発された世界で最も普及しているインプラントシステムです。

義歯の限界―インプラントへどこで踏み切るか?

そのブローネマルク・システムを販売しているのがノーベルバイオケア社で、また、3iとは他社が取り扱っているインプラントシステムです。この先生はインプラントシステム自体と、それを扱う業者の区別さえついていないのです。

繰り返しになりますが、この講習会はインプラントの専門医の資格取得を目指す歯科医師が対象の講習会です。治療の経験がある先生も、未経験の先生もいらっしゃるので、知識・技術にばらつきがあるのは致し方ありません。ただ、前述の先生は全くのインプラント初心者ではありませんでした。ある程度の知識があり、わざわざ休日を潰して講習会に参加し、インプラント専門医を目指そうという歯科医師に、このような基本的な知識が欠如していることに私は驚愕したのです。

昨年末にお亡くなりになったブローネマルク教授ですが、いつだったか、教授の直弟子で、私の師である小宮山彌太郎先生から、ブローネマルク教授が「もうインプラントは私の手に負えなくなった」と嘆いていると伺いました。
ブローネマルク教授が純粋に歯を失って悩む患者のためと生み出した治療法が、何故か商業化の波に乗せられ、世界中で様々な(なかには問題を含む)インプラントシステムが氾濫する結果となり、インプラント産みの親にもコントロールできなくなったことを嘆いていらしたわけです。

以前のコラムでも書かせて頂きましたが、今から30年以上前、母校の東京歯科大学にブローネマルク教授をお招きし、実際に日本初のインプラント治療を目の当たりにし、このような素晴らしい治療法が日本に導入されたのだという感激、興奮はその場にいた人間しかわからないかもしれません。

いつまでもこんな昔話をしていると、時代遅れと言われてしまいそうです。ですが、インプラント治療の祖であるブローネマルク教授が生み出したインプラントシステムを知らない専門医が育成されることは嘆かわしいことです。治療技術の習得以前に、インプラントの原点をまず理解し。基本を踏まえたうえで、そこから先は、個々の歯科医師が治療技術の発展につなげてくれればと願っています。
インプラント治療のスペシャリストとして養成される歯科医師を指導するものの一人として、その使命・役割を再認識させられた、帰りの新幹線でのひとときでした。

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