最善か無か – DAS BESTE ODER NICHTS

最善か無か – Das Beste oder Nichts

格好をつけた言葉ですが、もちろん私が思いついたものではありません。
車好きの方ならご存知かもしれませんが、これはメルセデス・ベンツを製造するダイムラー社が、かつて掲げていた企業スローガンであります。
その意味するところは、「コストを顧みず、最高のものを創り出そう」ということです。

なぜこの言葉をお話するかというと、先日、私が所属するスタディーグループで、ある本を出版しました。内容は、私たちがこれまで小宮山彌太郎先生から指導を受けたなかで、それぞれが心に残った言葉を集めた語録集というものです。その中で、私が挙げたのが「最善か無か」という言葉でした。

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ブローネマルクシステムが日本に初めて導入された1980年代、私の母校である東京歯科大学では開業医向けに講習会を行っており、当時、アシスタントとして講習会を運営する側にいた私は、インプラント治療の結果を示す例えとして、小宮山先生がこの言葉を引用されたことに強い衝撃を受けました。

いち車メーカーの企業スローガンである「最善か無か」― 何故これがインプラント治療に通じるかというと、インプラントは、骨とインプラント体との結合を獲得して良好に機能するか、獲得できずに全く機能しないかのいずれかしかありません。まさしく「最善か無か」なのです。

インプラント治療では、入れ歯のように“自分の歯と同じにはならないが、ある程度は噛める”といった妥協・中間の結果は存在しません。
インプラント治療は、ブリッジ・入れ歯などで失った歯を修復する従来の補綴(ほてつ)治療とは全く異なる治療法であるということ、これを十分に理解したうえで、歯科医師は覚悟をもって治療に取り組むことが大切であると、小宮山先生はおしゃっておられたのです。

この本に掲載されている他の先生方のコメントを眺めているうちに、私は胸が熱くなりました。
医院の所在地や年齢も異なる先生方ですが、みなに共通する意識は、歯を失って苦労されている患者さんに心身共に以前の健康を取り戻してほしいという、歯科医師として純粋な思いでインプラント治療に取り組んでいるということです。

私も今年、インプラント治療に携わってから30年となり、おこがましい言い方ですが一般的にはベテランと呼ばれる年齢になりつつあるのかもしれません。ですが、いくら経験を重ねても、生体はそれぞれ異なり、同じ口腔を持つ患者さんはこの世に二人といらっしゃいません。
今の私の心境を表現できる言葉がうまく見つからなのですが、初心を忘れず、驕ることなく、これからもひとつひとつの手術にひたむきに取り組んで行きたいと思っています。

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