高齢者のインプラントケアについて

ここ数年、日本口腔インプラント学会のシンポジウム等で、高齢者のインプラントがテーマとして取り上げられることが多くなりました。
これまでの歯科医療では、まず「よく噛めるようにする」ということが目標でありましたが、予防歯科に対する意識の高まりと、急速に進む高齢化社会においてQOL(生活の質)を考えた場合、歯のメンテナンスに焦点が当たるようになり、インプラントにおいてもそのケアに注目されるのは当然のことと思われます。

一般的に、インプラントのケアは天然歯(自分自身の歯)のそれに較べ、難しいと考えられているようですが、私はインプラントのケアが特段、難しいとは思いません。状況の良い歯茎から出ているインプラントは、上部構造の形態が清掃性を考慮して作製されているならば、天然歯より細菌に対して抵抗性が高いことは分かっています。
つまり、インプラントのケアは、天然歯と同等か、もしくはそれ以上に容易だと思うのです。
少なくとも天然歯のケアができる間はインプラントのケアも問題ないと思います。

問題は、天然歯のケアも自分でできなくなった場合です。
介護者が歯ブラシ等で清掃できるのであれば、インプラントも同様に清掃できるので、大きな問題は無いと思われますが、そうではなくなった場合、介護者の都合のため、天然歯を全て抜歯し、総義歯にした方が良いという少々乱暴な意見もあります。

確かに総義歯にすれば、口腔内のケアはずっと楽になり、細菌数も減らすことが可能です。ただ、歯が残っている場合に比較して、咀嚼機能が大分低下することは否めません。

インプラントが入っていても、ケアが難しくなれば、ネジで固定してある上部構造を外せば、口の中にはアバットメントと呼ばれる小さな突起が出ているだけになり、必要があればその突起を利用した安定の良い入れ歯を装着することが可能となります。

それすら清掃できない場合には、そのアバットメントも固定ネジを外してしまえば、骨の中にあるインプラントの上には歯肉が被さり、天然歯同様、口の中には何も存在しない状態にすることもできます。この段階で通常の総義歯を作製することが可能です。

インプラントのケアについて、こうした段階別の対処法が存在することを皆さんはご存知でしたでしょうか?
ただ、これは当院で採用しているブローネマルクシステムのように骨の中に埋め込んだインプラント体にアバットメントを介して上部構造がネジ止めされるつくりになっていて、取り外しができるシステムの場合です。
インプラント体とアバットメントが一体でできていて、その上に上部構造が接着剤で装着されているシステムではそうはいきません。

少し長くなりましたので、今回はここまでとし、次回は術者からみた高齢者に優しいインプラントシステムについて書かせて頂きたいと思います。

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