開院20周年を迎えて ― 医療は人なり

吉田デンタルクリニックは2017年4月12日で開院20周年を迎えました。
これまで沢山の方々に支えて頂き、私の好きな仕事を続けてこられたことを、この場を借りて皆様に深く御礼申し上げます。
20年前、大学病院の勤務医から、いきなりこの東京のど真ん中で開業し、自分の考える最良と思う診療を行ってきたつもりですが、ここで一旦、過ぎし日を振り返り、またこの先のことを考えてみました。

この20年間、歯を失ってお困りの方にはインプラントブリッジ・義歯などを、噛み合わせでお悩みの方には咬合治療を、また、この5年ほどは、歯の根が折れたり割れたりして、かかりつけ医からは抜歯しかないと言われたが、何とか抜かずに残したいと希望される方々には歯根破折保存治療を、というように、できるだけ患者さんのご要望に沿えるよう、一生懸命、診療を行って参りました。

私は基本的に楽観主義者で単純な人間なので、患者さんに「有り難うございます」と言って戴けると、「あぁ、上手く行ってよかったな」と言葉通りに素直に受け取ってしまいます。けれども、いくら私が頑張ってみても、どうしても人智の及ばない領域で、残念な結果に終わる場合もあります。ここで考えてみたいのは、そのような場合、治療を受けられた患者さんがどう思われているのか?ということです。

昨年ですが、NHKの「ドクターG(ジェネラル)」に出演された高名な心臓血管外科である南淵明弘先生の一言に非常に感銘を受けました。それは「医療においての成功(率)とは医者が決めるのではなく、手術を受けた患者さんが術後、元の生活に戻り、治療を受けて良かったと思ってくれて、初めて成功と言えると思います。」という内容でした。
私が以前、破折保存治療の経過について書いたコラムで、“成功率は概ね87%”などと書かせて頂きました。この治療を検討されている患者さんの参考になればと出した数字なのですが、全く医者側の成功率であります。人の生死にかかわる難手術を行う大変な名医であられるのに、謙虚な南淵先生のお言葉を聞き、私は己の未熟さを痛感しました。

同じ心臓血管外科医で天皇陛下の手術をされた天野篤先生の著書の中にも「病を癒やすは小医、人を癒やすは中医、国を癒やすは大医。せめて中医になれるように努力しなさい。」という一文があります。これもまた、私の心に響きました。

開院20年を経て、私と一緒に患者さんも歳を重ねてこられました。お見送りした方も数名おられます。歯以外にもご病気がある方、ご家族の介護などで時間が取れず、ご自身の治療に来たくてもなかなか診療に来られない方も増えて参りました。いくらインプラントや補綴治療の専門医と言えど、全身疾患や、生活環境など、患者さんのバックグラウンドを知らずに口腔内を見ているだけでは歯科医は勤まらないですね。あと数年で還暦となりますが、まだまだ人間が出来ていないと、最近つくづく思います。

「医療は人なり」これは私のモットーであり、吉田デンタルクリニックの基本理念であります。
この理念は当院スタッフと共有しているのですが、患者さんにも「吉田という歯医者に診てもらってよかった」とおっしゃって頂けるよう、技術を磨き、患者さんに寄り添う気持ちを忘れず、30周年に向けて研鑽を積んで参ります。「医療は人なり」です。

ページトップへ