歯科技工というもの

歯科技工というもの

先日、歯の修復や、歯を失った部分の修復に関する技術・学問についての日本補綴(ほてつ)歯科学会が東京ビックサイトで開催されました。その学会で、当院で技工をお願いしている歯科技工士がシンポジストとして講演を行ったので、私も聴講して参りました。
そこで今回は歯科技工というものについて思うところを述べてみたいと思います。

ところで皆さんは、歯科技工士という職業をご存知ですか?
歯科医師が患者さんの口腔内から型採りした歯の模型に基づき、詰めもの、かぶせもの、入れ歯などを作り上げていくことを歯科技工と言います。歯科技工を行うことができるのは歯科医師と歯科技工士に限られ、歯科技工のみを専門で行う人を歯科技工士(以下、技工士と略します)といい、国家資格を有しています。

治療から技工まで全てをご自分でされる歯科医師はわずかで、ほとんどの歯科医師にとって技工士は治療を成功させるための重要なパートナーです。歯科医師の技量はもちろんですが、皆さんのお口に入る修復物の出来不出来の半分は技工士の腕によって決まると言っても過言ではありません。また、自院の技工を託する技工士の技術を見極めるのも歯科医師の技量のひとつとなります。
歯科医師同様、技工士にも得意分野があり、現在、当院ではインプラント、審美性を追及した詰めもの・かぶせもの、入れ歯など、それぞれ得意とする、数箇所の技工所に歯科技工を依頼しております。

下の写真をご覧下さい。中央の前歯4本のうちの3本が修復されたものです。そのうち1本が、治療をしていない歯なのですが、どれが作り物で、どれが本物の歯か、見分けがつきますか???

写真

この修復物を製作したのは前述の学会で講演をされた方で、当院でお世話になっている技工士です。
当院から遠方にあるため、直接、技工士に患者さんの口腔内を見ていただくことは難しいのですが、デジカメの画像を添付したメールで歯の色や形の伝達を行っています。画像がなるべく自然色に写るよう、診療室の照明を特殊な蛍光灯に交換し、またデジカメ撮影の際にも色調補正用の道具を使い、出来るだけ正確なデータを送るよう工夫を重ねています。それでも画像で伝えきれないことは、技工士に直接、電話で患者さんのご希望を伝え、色・形を作ってもらいます。通常、技工士は歯科医師の指示で仕事をするものですが、この技工所に所属する技工士はプロ意識が高く、与えられた情報だけでイメージが湧かない場合、自発的に連絡をくれ、私と更に詰めた議論をすることもしばしばあります。

このように手間暇をかけた仕事ですから、当然、製作に時間もかかります。患者さんには仮歯でお過ごし頂く時間が比較的長くなるので、ご不便をおかけするのですが、仮歯もこの技工所が製作しますので、仮歯といえども、患者さんは“このままでいいです”とおっしゃるほどの綺麗な出来具合です。

さて、仮歯を経て、最終的に出来上がったものを患者さんにご覧頂き、ご納得いただいた上で装着します。もし患者さんがイメージされた形・色と違っていれば、気に入ってくださるまで技工所に戻し、何度でも調整をお願いします。コストを抑えた流れ作業の技工所や、一般的なレベルの技工士にはなかなか期待できないような、きめ細かな対応をして下さいます。

問題はコストです。このように全国規模の学会で講演を行なったり、海外にまで指導に行く技工士が何人もいるようなハイレベルの技工所ですので、おのずとその技工料金もハイレベルです。保険外の治療については、使用する材料によってある程度、金額の相場のようなものがありますので、いくら技工料が高くても、そのまま患者さんに頂戴できるわけではないのが辛いところです。ですが、そこで妥協せず、患者さんの満足度の高い、長く使えるもの供したいという思いで、この技工所にお願いしています。

今、歯科医院のサイトを見ると、殆ど治療費が表示されていますので、同じ修復物の料金を他院と比較した場合、どうしても当院は不利になりがちなのですが、それは承知の上です。実際、電話で、「そちらでオールセラミックはいくらですか?ジルコニアはいくらですか?」というような金額のみの問い合わせも多々あり、”患者さんは技工のことはわからないものね・・“と受付は溜め息をついています。

“セラミックならどこでやっても同じ、料金で決めます”とお考えの方へ、今回のコラムが少しでもお役に立てれば幸いです。

ちなみに上の写真のどの歯が作り物であるかのお答えは、次回のコラムに引き継がせていただきます。お楽しみに!

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