医療機関における衛生管理について

医療機関における衛生管理について

今年は医療機関における衛生管理に関連する事件が2件、大きく取り上げられました。
ひとつはインプラント体の使いまわしをしていた歯科医師、同業者としては“有り得ない”の一言です。そして最近、近視矯正のレーシック手術で、ずさんな器具の管理により集団感染を起こした眼科医が逮捕されました。

報道によれば、その眼科ではレーシックの症例数を増やすため(=収入を上げるため?)、滅菌 (厳密には異なりますが、わかりやすくいえば消毒のことです) に割く時間が取れず、器具の使いまわしをしていたようですが、これでは感染が起こるのは当然の結果でしょう。

当院でもインプラント手術を行っておりますが、1日の手術数は、午前1例、午後1例の計2例に抑えています。インプラント体の埋入本数により実際の手術時間は変わりますが、本数に関わらず、術前の口腔内清掃や術後のリカバリーの時間は変わりませんし、また、器具の消毒・滅菌に最低でも2時間はかかるからです。器具は予備のセットを用意していますが、それは術中の万一のためであって、滅菌が間に合わないからといって使うことはできません。

感染予防は医療機関としての最重要課題ですが、患者さんには見えない部分であり、また予防をしたからといって、それが直接、収入に結びつくものではないため、コスト削減を図れば、おのずとこの部分がおろそかになってしまうのかもしれません。
当院では「スタンダード・プリコーション」(問診表などで自己申告される感染症の有無にかかわらず、全ての患者の血液や唾液などには感染の可能性があると考え、患者及び医療従事者の感染を予防するための基本的な院内感染予防対策) の概念に基づいて器具を取り扱っており、日常業務の中で、滅菌作業には相応の手間と時間をかけています。

医療費が全額自費治療となるアメリカでは、訴訟社会でもあり徹底した感染予防対策が取られていますが、保険診療が基本となるわが国では、感染予防は医師・歯科医師の職業的な倫理観に委ねられているのが現状なのではないでしょうか。

前述の眼科で感染症に罹患された患者さんは本当にお気の毒なことですが、もし治療費が安いということだけでこの医院を選んだとしたなら、なぜ安いのか、手術を受ける前に考える余裕があったなら、ひょっとすると不幸な結果は防げたかもしれません。ですが、医療の現場をご存じない一般の皆さんにこれを考えろと言うのは無理なお話かもしれませんね・・・
自分の体を託する医療に関しては、安価で高品質のものを手に入れるのは不可能だと考えますが、いかがでしょうか。

ちなみに前回のコラムでご紹介した歯の写真ですが、向かって右側の中央の歯、1本だけが患者さんご自身の歯で、あとの3本が作り物なのでした。どうですか?当たりましたか?

技工物正解

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