吉田:「Nさん、こんにちは、具合は如何ですか?」
患者さん:「いやあ、すごくよく噛めます。インプラントをやってよかった。」
インプラントの上部構造(人工歯)が入り、その次の来院時、患者さんからのこの言葉を聞けることが、インプラント専門医として、何よりの喜びです。今から15年以上も前の大学病院勤務時代のことですが、こういった会話を交わす際、患者さんの目の輝きが、インプラントを入れる前とは明らかに変わっていたことを、今でも、はっきりと覚えています。
1983年3月、東京歯科大学を卒業した私は、迷うことなく口腔機能の回復を図る補綴(ほてつ)治療の道に進みました。補綴治療とは耳慣れない言葉ですが、失われた歯の機能を、入れ歯やブリッジなどで回復する治療法の総称です。私は卒業までまだ2年近くある大学4年生のときに補綴の専門医になることを決め、卒業後、母校の大学院に進学、義歯を専門とする講座に在籍することになりました。
そして入局3ヶ月後に、運命的ともいえるインプラント治療との出会いがありました。
1983年6月、スウェーデンのイエテボリ大学よりブローネマルク教授が招聘され、東京歯科大学で日本初のブローネマルク・システムのインプラント治療が開始されました。医局員であった私は、幸運にもそのチームのメンバーに加わることができたのです。私のインプラント治療もそのときに始まり、早いもので25年以上が経過しました。これまでの埋入本数は、3000本を越えております。
インプラントによる失われた歯の修復は、義歯によるものとは較べようもなく優れたもので、患者さんの喜ばれる姿をたくさん見てきました。と同時に、生体内に異物を入れていくという治療方法の難しさ、厳密さを開発者のブローネマルク教授や、その愛弟子であり、日本におけるインプラント治療の第一人者である小宮山彌太郎先生から徹底的に指導されて参りました。
今日、本治療法が広く認識されるようになり、歯を失われた多くの患者さんに恩恵をもたらしていることは大変喜ばしいことです。ただ、しっかりとした治療法や技術の裏付けがないまま、安易なインプラント治療が行われることにより、様々なトラブルが発生し、不幸な結果が多く見受けられることもまた事実です。
私にとってのインプラント治療は、安全性と高い成功率の確保が最優先であり、その結果として、患者さんが長く、快適にインプラントをお使い頂けること、これが私のインプラント治療のゴールです。最先端の治療は未だ評価の定まらないことも多く、全ての患者さんにとって適応可能で、かつ最良のものであるとは限りません。少なくとも私を信頼してくださり、治療をお任せくださる私の患者さん方には、私自身が安全・確実であるという確信を持つ治療法のみを選択しております。
保守的と思われるかもしれませんが、ブローネマルク教授の薫陶を受けたものの使命として、その教えからぶれることなく、治療を受けられた皆様が、インプラントにして良かったと、心から思っていただけるよう、これからも基本に忠実に、着実に治療にあたっていく所存です。
院長 歯学博士 吉田 浩一
東京歯科大学非常勤講師
日本口腔インプラント学会 指導医・専門医
日本補綴歯科学会 指導医・専門医
聖路加国際病院 登録医