歯根破折の予防について考える

日々の臨床に於いて、歯根破折の治療がその多くを占めるようになって参りました。
また、残念ながら、複数の歯に破折を起こす方もいらっしゃいます。そこで今回は歯根破折の予防について考えてみたいと思います。

歯根破折の原因には以下の2つの要因があります。
① 力を受ける「歯」の問題
② 歯に加わる「力」の問題

まずは一番目の「歯」の要因から見ていきましょう。
最も有効な対策は、できるだけ歯の神経を取らないということです。
失活歯 (神経を取り除いてある歯) は、生活歯 (神経が残っている歯) に較べ、圧倒的に破折するリスクが高くなります。やむを得ず、神経を取ってしまった場合、歯の一部の詰め物より、歯面全体を被せるクラウンで修復することで破折のリスクを軽減することができます。

また、クラウンで修復する場合、もともと神経のあったスペースにポスト、あるいはコアといわれる土台を入れますが、素材に金属を用いると、歯質との弾性係数の大きな隔たりにより、破折しやすくなると言われています。更に、ポストが短かかったり、歯質ときちんと接着していないと一段と破折しやすくなります。言い換えれば、適切な長さのグラスファイバー製のポストとプラスチックを用いたコアを、歯質としっかり接着させることにより、破折のリスクを軽減できます。

ただ、この土台部分は患者さんの目からは見えないため、きちんした治療が行われていないことが非常に多く見受けられます。これは建物を建築する際、建ててしまえば見えない土台には手抜き工事を行い、上物のみ見栄え良く建てることと同じです。
土台の治療は地味ではありますが、歯を支える屋台骨ですから、この治療には時間と費用をかけることの大切さを是非、皆様にはご理解頂きたいと思います。
また、クラウンと歯質との境から虫歯が生じると、これも破折の原因となるため、精度の高い修復物を入れていただくことが大切です。

次に二番目の歯に加わる「力」の要因です。
これをできるだけ小さくすれば破折は起こりにくくなります。
昼間、起きているときに歯が割れるほど大きな力で噛む人はまずいません。食事中に硬いものの混入等で割れてしまうのは事故であり、これを防ぐことは不可能です。

問題は夜間の就寝時に加わる「力」です。具体的には夜間就寝時の歯ぎしりあるいは噛みしめです。
歯ぎしりや噛みしめの原因は様々で、これらを取り除くことはなかなか難しいのですが、原因によっては噛み合わせの調整(咬合治療)によって可能となる場合もあります。

それ以外の場合は対症療法となり、その一つは噛みしめる筋肉の筋力を減弱するためのボツリヌス菌の注射投与ですが、もっと手軽にできる対策として「ナイトガード」の応用があります。
「ナイトガード」とは患者さんの歯の型どりを行い、作製した薄いマウスピースを上顎の歯にだけ就寝時に装着して頂くという方法です。

歯と歯の間に柔らかい樹脂が介在することにより、歯が削れたり、強大な力が一点に集中することを避けてくれます。装着してお休みになれる様であれば、非常に有効な手段となります。
これは健康保険で作製することができ、費用もそれほどかかりません。
費用対効果が大きいので、失活歯が多い方、歯ぎしり・噛みしめがある方、歯根破折を繰り返す方には是非、装着して頂くことをお勧め致します。

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